自室でのんびりと読書をしていたある秋の昼。今日は、心理学を私から学びたいという高校生が此処に来る予定だ。
心理学に興味があるとは感心だな、なんて思うと思わず頬が緩む。

数十ページほど本を読み終えた頃、部屋の扉が叩かれた。

「先生、来客です」

私の生徒が小声でそう伝える。
ハキハキと喋ってほしい所だが、今はそれどころじゃない。
私は「どうぞ」と一声かけて、その高校生を中に招き入れる。

「失礼します」

芯のある声で礼を言われた後、扉が開かれた。
扉を開いたのは高校生にしては大人びた雰囲気の男子生徒。

神崎鳴海(かんざき なるみ)先生、ですね」

「あぁ、いかにも。
君は…神谷誠(かみや まこと)くん、だね?」

すると、彼は突然僕の目の前にある机の上に一枚の紙を叩き置いた。
私はその紙を見て体が固まった。

警察官の父が解決した事件の新聞。
私も、関与した事件の新聞だった。

「俺はこの事件の加害者の息子です…!」

彼の瞳が真っ直ぐ僕の瞳に突き刺さる。
まさか ... 、と私の口が開いて閉じない 。

「 俺の父は ... 、犯人じゃない !! 」

はっきりと言い切った ... 。
余程な自信があってのことだろう 。
その瞳 ... 、口調 ... 、行動 全てが彼の心理を物語っていた 。

「 ほぉ ... 、私の推理に不満が ? 」

「 えぇ 、不満だらけです!」

「 ... 気に入った 。話を聞こうじゃないか 」




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