要先輩だ。
先輩は、私と凛が親しげに話しているのを見て、表情を曇らせた。
「あ、要先輩。凛くんとお昼食べてて...」
「そっか。...俺も、ちょっと、美琴に話したいことがあったんだけど...」
先輩の言葉に、凛は「あ。俺はこれで失礼するよ。また放課後な、如月。」と、巧みに会話を遮り、私の元を去っていった。
残されたのは、私と要先輩。気まずい沈黙が、二人の間に流れる。
「...あの、先輩?」
「...なんでもない。また後で」
先輩は、そう言って、足早に去っていった。
凛の積極的なアプローチに、私は戸惑いながらも、少しずつ彼を意識し始めている。
そして、その様子を、要先輩は、ただ見ていることしかできないのだ。
彼の色に、私の心が、染まっていくのを、どうすることもできないのだろうか。



