「...また、傘、忘れちゃった。」







 
 思わず、そんな言葉が口をついて出た。







凛は、私の言葉に、またあの、少し意地悪そうな、でも、どこか安心させるような笑顔を浮かべた。










 
 「ふーん。じゃあ、今日は俺が、美琴ちゃんに傘、貸してあげる。」









 
 凛はそう言って、私の肩にそっと手を置いた。




その感触に、私の心臓は、雨音のように激しく脈打った。






要先輩との関係とは違う、ざわめきが、私の胸の中に広がっていくのを感じていた。







このざわめきは、一体何なのだろうか。