◯バイト先のキッチン・放課後
前回のラストの回想 結都とキスしたこと、妹なんて思ってないって言われたこと。
その後すぐに鈴音母が鈴音を呼び出して結都とは話ができないまま。翌日から結都は遠方で撮影のため1週間くらい家に帰らない。
葵「鈴音せんぱーい」
鈴音(結都くんが帰ってきたらどんな顔して会えばいいんだろう?)(妹として見てない……って。じゃあ、わたしは結都くんのことどう想って――)
葵「さっきからずーっと同じ皿洗ってますけど」
葵の顔が視界に飛び込んできて、今バイト中だったと気づいてハッとする鈴音。
鈴音「わー、ごめんね! 少し考え事してて」
制服のシャツから結都がつけたキスマークがチラッと見えた、それに気づいた葵。
葵「鈴音先輩って彼氏いたんでしたっけ?」
鈴音「な、なんで? いない、けど」
葵「へぇー、そうなんですね」キスマーク見えてることはあえて言わない。含みある感じの表情で。
鈴音はなんで葵がそんなこと聞いてきたのかわからない、あまり深い意味はないと思ってスルーしてる感じ。
葵「面白いネタになりそうだなぁ……」鈴音には聞こえてない。


*場面転換


◯リビング・休みの日
結都が家を空けてから1週間以上が過ぎた。予定だと今日結都が家に帰ってくる。
鈴音がリビングに行くと結都の父がアルバムを整理してるところだった。一緒に整理を手伝うことに。
結都の小さい頃の写真がたくさん。
鈴音(小さい頃の結都くん可愛い。もうすでに完成されてる顔立ちだ)
写真の中に結都の母親が写ってるものが何枚か出てくる。
結都のお母さんのことはあまり深くは聞いたことがない鈴音。ここではじめて結都の母親が家を出た理由を知ることになる。
結都がまだ幼い頃、母親が出て行った。子どもを育てる母親になるのではなく、まだ女性として恋を楽しみたかった。
母親が家族を捨てて別の男の人のところへ行ったので離婚。結都は父親に引き取られた。
母親に捨てられたと思っている結都は、もう二度と大切な人に捨てられたくない気持ちを抱えてる。それをなんとなく父親が気づいてる。
高校に入った頃、今のマネージャーにスカウトされてモデルの活動をすることに。最初はあまり乗り気じゃなかった、でも周りが自分を求めてくれてるような気がして活動を続けてきた。でも、周りが見てる求めてるのはモデル「ユイ」として。本当の自分「結都」を理解して求めて接してくれる人は父親以外いなかった。
結都父「結都は誰かに必要とされたい気持ちが人一倍強いのかもしれない」
結都父「鈴音ちゃんと暮らし始めてから結都の表情がやわらかくなったんだ。きっと、結都にとって鈴音ちゃんがとても大切な存在なんだね」
結都父「だからこそ失いたくない気持ちが強くて過剰すぎるところがあるかもしれないんだけれどね」
そんな結都をこれからも愛してあげてほしい(家族として)お願いされる鈴音。
結都父「これからもいちばんそばで結都を支えてやってね」
結都の過去を知って胸が痛む鈴音。同時に結都に会いたい気持ちが込み上げてくる。
家族でいたいのに、上手く気持ちを抑えられない。
気づけばもうすぐ結都が帰ってくる時間、身体が勝手に動き出して家を飛び出す鈴音。無我夢中で走ってる感じ。
駅まで走っていき、人混みの中でも真っ先に結都を見つける鈴音。
鈴音「結都くん……!」
結都「え、鈴音どうした――」
結都に抱きつく鈴音、結都は驚きながらも受け止める。
結都「そんなに俺に早く会いたかった?」冗談っぽく聞く感じで。
結都の背中に回してる鈴音の手がギュッと抱きつく力が強くなる。
鈴音がコクッとうなずきながら「どうしても結都くんに早く会いたかった……っ」
いつもより素直な鈴音。結都は予想外の答えが返ってきて少し戸惑ってる様子。
結都「え、待ってなにこれ夢……?」
鈴音「夢じゃない……よ」
結都「俺に会いたかったとか可愛いがすぎる……」
結都も鈴音を愛おしそうに抱きしめ返す。この瞬間、ふたりはすごく幸せそうな様子。
同時に鈴音は自分の気持ちを確信する。
結都「鈴音に捨てられたら俺死ぬからね」
鈴音(過剰すぎる愛だけど、それも含めてぜんぶ受け止めるから)(やっとわかった。わたしは――結都くんのことが好きなんだ)
家族としてではなく、ひとりの男の子として結都が好きだと自覚。
ふたりの幸せな様子を見えない位置からスマホを向けて撮影してる影が(鈴音たちは気づかない)
葵「ふっ……いいもん撮れちゃった」
影から笑ってる葵の口元が少し見える感じのラストが引きで。