◯撮影スタジオ・放課後
結都の忘れ物を届けにスタジオに向かう鈴音。
ちょうど休憩時間のタイミングで結都に忘れ物を渡す。
そこに雑誌の編集者さん(立場ある人)登場。
編集「いやー、ユイの人気は相変わらずすごいねー」
拍手しながら結都に近づいてくる感じ。
結都に好意的な人かと思いきや、周りに聞こえるように嫌味ばかり吐き捨てる。現場の空気が少し悪くなる感じ。
編集「いいよなー、顔が整ってるだけでちやほやされてさー」
鈴音(い、今の言い方ちょっとトゲがあるように感じたのわたしだけ?)
鈴音が結都のほうにチラッと目線を向ける。
結都は表情をあまり変えてない。周りのスタッフも何も言えずに気まずそうにしてる感じ。
編集「話題性だけで勝ち取ってきたところあるしな?周りよりすこーしだけビジュアルがいいってのと運がいいんだよな!タイミング的にも今メンズモデルで目立ってる子があんまりいないからなぁ」
鈴音(話題性とか運とかタイミングとか……。言葉がいちいち引っかかってモヤモヤする)
◯回想 結都がモデルの仕事に対して真摯に向き合ってるのを鈴音が知ったとき。自分ひとりで仕事してるわけじゃない、たくさんの人の支えがあって今の自分がいるって鈴音に打ち明けた回想
編集「まあ、そういう話題性だけのモデルって爆発的な人気は一瞬だしさ。気づいたら存在も消えてーー」
鈴音「そ、そんなことないです!」
鈴音(今こんなふうにモデルとして輝く瞬間を作ってるのは、紛れもなく結都くんの力だから)
鈴音「話題性を活かしきれてることも才能だと思いますし、結都くんの人気は結都くん自身が築き上げてきたものだとわたしは思います」
鈴音(知名度だって簡単に上がるものじゃない。きっと結都くんには周りを惹きつける魅力や夢中にさせる力や才能があるから)
ここで鈴音をかばうように結都が前に出る。
結都「俺もまだまだ未熟なところあるので。モデルとして認めてもらえるように精進します」
編集「そ、そうだな」
結都「また仕事でご一緒する機会があればそのときはよろしくお願いします」
この場を穏便に収める感じで。


*場面転換


◯撮影終了後、外でマネージャーの車待ち
生意気なことを言ってしまったと後悔して若干落ち込む鈴音。落ち込んでる鈴音に飲み物を買ってきた結都。
結都「なんで鈴音が元気なさそうなの?」
鈴音「結都くんに迷惑……かけちゃったから」
結都「まあ、いろいろ言われ慣れてるから気にしなくていいよ」
鈴音「結都くんのこと何もわかってないのに、勝手なことばっかり言ってるのがどうしても納得いかなくて……。でも、今後結都くんが仕事で関わることがある人かもしれないのに、いろいろごめんなさい……」
結都「いいよ。鈴音はなんも悪いことしてないよ」
結都に励まされながらもまだ少し落ち込む鈴音。
鈴音「わたしはもう少し自分の言葉に責任を持てるようにしたい……」
結都「なんで?」
鈴音「だって、さっき結都くんがまとめてくれたからよかったけど……。わたしが思ったことそのまま口にしちゃったせいで、その……」
結都「さっきの鈴音サイコーにかっこよかったけど」
結都は清々しい笑顔で鈴音を見てる。
数秒目が合って見つめ合ってる感じ(鈴音が結都の笑顔に見惚れてる)
鈴音(こんな表情の結都くんはじめて見た。みんなが知らない、わたししか知らない結都くんの笑顔……)
結都「もしかして俺に惚れちゃった?」
鈴音「惚れてないよ。でも、モデルとしてのユイくんは尊敬してる」
結都「流れ的に好きになっちゃったでいいじゃん」
鈴音「よくないよ。それだとわたし完全なブラコンじゃん」
結都「俺はもうとっくに妹という名の沼にハマってるよ」
鈴音「それを世の中ではシスコンって言うんだよ」
結都「じゃあブラコンとシスコンで両想いだ」
鈴音「意味わかんない思考回路を披露しないで」
マネージャーの車が来る。鈴音が先に車に駆け寄ってそのあとを結都が追いかける感じ。
結都「鈴音はいつだって俺の欲しい言葉をくれるね」鈴音には聞こえてない
鈴音「え?」
結都「鈴音は可愛い無限製造機だよってこと」
鈴音「意味わかんないよ!」


*場面転換


◯学校の門・放課後
鈴音バイト休み、ひとりで帰ろうと門を出ると葵が待っていた。
葵「あっ、鈴音先輩〜!」
鈴音「え、葵くんどうしたの?」
バイト先以外で会うことがないので、葵が学校に来て驚いてる鈴音。
葵「じつは僕、ものすごーく面白いことに気づいちゃって。それを鈴音先輩に話したいなぁと思って」
鈴音(面白いこと? バイトで会ったときに話せばいいのに、わざわざ学校に来るってそんなに?)
葵がスマホを取り出して動画を再生する。この前、結都が海の家でバイトしてるときに撮った動画が事務所のアカウントからアップされてるもの。
葵「これ、鈴音先輩ですよねー?」
動画に一瞬だけ鈴音が映っていた。拡大しないとわからないくらい小さいけど葵は気づいた。
撮影になんで参加してるのか、もしかして関係者だったりするのかいろいろ聞いてくる葵。
葵「もしかして、この動画に出てる人の中に鈴音先輩の彼氏がいるとかっ?」
鈴音「ち、違うよ! 結都くんとは――」
鈴音(はっ、しまった……)結都の名前をうっかり出してしまった
ここで親の再婚で結都が兄になってることを仕方なく説明。納得してくれるかと思ったら、結都に会いたいと言い出す葵。
鈴音の家まで送るという強行突破。鈴音の帰りが少しでも遅いと家の外で待ってる結都と遭遇。
葵「わー、ほんとにモデルのユイがお兄さんなんですねっ」
鈴音と一緒にいる葵を思いっきり睨みつけてる結都。顔は笑ってる感じ。
結都「誰……その得体の知れない馬の骨」
鈴音「い、言い方! バイト先の子、なの」
結都「バイト先に男がいるとか初耳なんだけど」
結都の態度からただの兄妹ではなさそうな雰囲気を感じ取る葵。これは面白いネタになるかもと思って何かを企んでる顔。
葵が動画のことを説明。結都がすぐに事務所に連絡して該当の箇所を編集後に動画を再アップすることに。
現段階では葵は「いい子」設定で、ふたりの前から去っていく。
葵の後ろ姿を見ながら結都がボソッとつぶやく。
結都「……邪魔だな」
鈴音「え?」
結都「んー? 目障りなものは消すしかないよねって」
なんのことを言ってるのかいまいち理解できない鈴音。


*場面転換


◯学校行く前・玄関・朝
鈴音が外に出る前に呼び止める結都。
結都「はい、鈴音ちゃん。外出る前に俺んとこ来て」
なぜか両手広げて待ってる結都。また結都がよくわからないことしてると呆れ気味の鈴音。
結都「ほら無視しない。おいで」
強引に後ろから抱きしめられる。
結都「夜まで鈴音に会えないから」学校終わりから夜まで撮影予定
結都からいい匂いがする、結都の香水の匂い。それを結都に伝えると鈴音にも同じのをつけてくれた。
ほんのり結都の香りに包まれて、なんだか気持ちが落ち着かない鈴音。
鈴音(なんかこれ、ずっと結都くんがそばにいるみたいで心臓うるさい……)
鈴音が前よりも自分を意識してることになんとなく気づいてる結都。
結都「厄介な悪い虫を排除しなきゃいけないし」
結都(……なんてね。まあ、それもあるけどさ――)(もっともっと……俺を意識してくれるように、ね)
イジワルに笑う結都の顔がヒキ。


*場面転換


◯学校の屋上・お昼休み
いつものメンバー3人、屋上でお昼ごはんを食べてる。
梨々花「すーたんなんかいい匂いする〜!」
鈴音「えっ、そうかな」
なごみ「ほんとだ! いつもの鈴音となんか違う‼︎」
香水が実は結都がモデルしてるブランドのものだとなごみが気づく。
なごみ「これユイが宣伝してるやつじゃない⁉︎」
発売前に香りのサンプルが配られていた。それを覚えてたなごみ。
ユイが宣伝したことから発売直後に即在庫がなくなった。
なごみ「しかも限定品でなかなかゲットできないやつじゃなかった?」
鈴音(ま、まずい……どうしよう。まさかユイ本人がつけてくれたなんて言えないし)目が泳いでる感じの鈴音の表情
梨々花「そんなレアなんだぁ? 入手ルート気になるじゃんっ」
ふたりがグイグイ迫ってくる、タイミングよくチャイムが鳴って慌てて教室に戻ることになる。
結都の香りがするたびに結都の顔が浮かぶ。
鈴音(意識すればするほど、結都くんの顔しか浮かばない、なんで……?)
だんだんと結都のことでいっぱいになっていく鈴音。家に帰るまでずっとこんな調子。


*場面転換


◯鈴音の部屋・夜
仕事から帰ってきたばかりの結都が鈴音の部屋に来る。
鈴音の顔見た瞬間に鈴音を抱きしめる結都。
今日ずっと意識してた結都の香りがして、あっという間に頭の中は結都でいっぱい。
結都「すず? なんで俺のほう見てくれないの?」
鈴音「っ……」
結都「鈴音ちゃーん」
グイグイ迫ってくる結都を押し返す鈴音。
鈴音(こんなに結都くんでいっぱいになってる顔、見られたくない)
結都はなんとなく気づいてる感じ。鈴音が自分を意識してるのがわかってうれしくて仕方ない様子。
結都「……俺のことで頭いっぱいになっちゃった?」にやり、してやったり顔
結都に対してこんな気持ちになるのは、自分の中で何か気持ちの変化があるからと気づく鈴音。
◯回想 結都にドキドキさせられたところ
鈴音(気づいたら結都くんを目で追ってるのも、頭の中がいっぱいになるのも――)
目の前にいる結都を見て、胸が騒がしくなる鈴音。
モデルとしての「ユイ」はみんなが知ってる。でも、素顔の「結都」は自分だけが独占できるもの。
鈴音(こんな結都くん、他の子は知らない)(わたしだけが知ってる結都くんの甘い一面)
結都(あーあ、まんまと俺の思惑通りになってんのほんと可愛いな……)(ゆっくり時間をかけてじわじわ俺に染められた最高に可愛い鈴音)
(俺のことでもっと夢中になって、俺しか見えなくなればいい)(俺が満足するまでたっぷり愛すから)
鈴音の反応を見ながら、鈴音の耳に軽く触れてささやく。
結都「……俺のぜんぶ鈴音が独占していいんだよ」
惑わしてくる結都に対して、気持ちがグラグラ揺れる鈴音。
でも兄妹だということが引っかかってしまって、同時に結都がどうして自分にこんなふうに触れるのかはっきりしたい。
鈴音「結都くんが何考えてるかわかんない」「わたしのこと、ただの妹だと思ってるなら、こんなことするの違う……と思う」
少し強めに言い返す鈴音。これ以上、結都に気持ちをかき乱されたくないというのも込めて。
結都は妹という単語が引っかかる。
結都「俺が鈴音を妹として見てるって本気で思ってる?」
今まで見たことがないくらいの結都の真剣な表情。
結都「俺はあの日の夜、鈴音と出会ったんだよ。妹と出会ったんじゃない」
鈴音(たし……かに。それはそう、だけど……)
◯ふたりがはじめて出会った夜の回想
この出会いから全てが始まった。
結都「俺が惹かれたのは鈴音なんだよ」
結都が鈴音の左手を取って薬指に触れる、そのまま薬指に軽く口づける。
ここで鈴音は自分の気持ちをほぼ自覚する感じ。8話でははっきり好きと気づいた描写は入れない。
結都「……嫌なら拒んで」
ゆっくり鈴音に顔を近づけて、そのまま唇にキス。前に海でつけたキスマークが薄くなってたのでもう一度つける。
ずっと引いていたラインが、ほんの少し一線を超えた。
結都「好きだよ……鈴音」
たった一度のキスが、すべてを甘く狂わせる。