「私…また、その…学校、で、いじめられてるの」
そう告げることができたのは、就寝前のことだった。
家に帰ってから話すチャンスはたくさんあったけど、タイミングを逃してしまって、結果こんな時間になってしまった。
お父さんとお母さんは目を見開いて、でもお互いに顔を見合わせた後、小さく頷いた。
「やっぱり、そうだったか」
お父さんの口から飛び出した言葉に驚く。
「もしかして…知ってたの?」
「いいや、確信はなかった。でも…ここ最近、ずっと菜月の様子がおかしい気がしてな…」
___母さんとも話してたんだよ、もしかしてって。
それでも私に聞けずにいたのは、私が笑って過ごしていたからかも知れない。
隠そうとしているって気づかれていたのかな。
「わ…私、今日ね…本当は死のうとしてたの」
「…なんだって?」
私は書いてあった遺書をお父さんに差し出した。
お父さんは中身を取り出し、悲しそうに読んでいて、お母さんはその横で静かに涙を流していた。
最後まで読み終えて、お父さんが私の頭を優しくなでる。
「すまない…こんなに追い詰められているとは思わなかったんだ」
お父さんはそれから、ぽつぽつと話してくれた。
私がまた、自分からいじめを話してくれると思っていたということ。
それにあぐらをかいていた自分が恥ずかしいということ。
明日、仕事を休んでお母さんと二人、学校についてきてくれるということ。
私はもう、一人じゃないということ。
一緒に戦っていこうということを、涙ながらに長い時間をかけて語ってくれた。
「一人で戦わせて、背負わせてしまって、すまなかった」
__バカな選択をしないでくれて、ありがとう。
最後にそう言って抱き締めてくれたとき、私は幼い子供のようにわんわんと泣いた。
明日からも学校は続く。
だけど今は、色んなことを選べる。
学校に行くことだけが全てじゃない。
戦い方は今、自由に選べるんだ。
「私、今度こそ負けないから…!負けてなんかやらないんだから…!」
お父さんとお母さんの腕の中、私は決意した。
いじめと向き合いながら、私は明日も生きていく。



