「お初にお目にかかります!私、金田と申します」

時は昼休み。
賑やかな生徒たちの声が響きわたる廊下を背に、私は図書室で件の彼に自己紹介をしていた。
すっかり言い慣れたそれは、新聞部に所属していた頃からの定番の挨拶。
目を丸くした彼に、私はハキハキとした口調でこう告げた。

「率直に申し上げますが、あなた様は今、悩みを抱えておいででは?」

「え…なんで分かるんですか…?」

「私、今は違いますが、元は新聞部に身を置いておりまして…観察眼には多少の自信があるのです」

「…は、はぁ…」

困惑した様子の男子生徒に、ニコリと微笑む。

「もしよろしければ、私に悩みを話してみませんか?もちろん、誰かに他言などいたしません」

他人の悩み相談を、自ら買って出る。
話したい話をとことん聞く。
これが今日、彼に近づいた目的だった。
部活を辞めてもなお、止めどなく溢れ出る“人の物語”への欲求に、好奇心___。
この情熱を何かにいかせないかと考えた結果、出てきた結論が悩み相談を聞くというものだった。

「え…でも…話せば長い話になるし…」

ちらちらと私を見る彼の瞳は、私に悩みを話したがっているように見えた。
真っ直ぐに彼を見据えて、私は告げる。

「お聞かせ下さい、あなたの悩みを、物語を…!」

___これが私の“青春”だ。