「ねぇ、カイは好きな女の子とかいないの~?」

「…なに、突然…」

妙に取材してくる賑やかなお客様が店を出るやいなや弟に話しかける。
じとりとした視線を向けてくるその顔は、よく見慣れたものだった。

「彼女とかいるのかな~って。ほら、そんなの聞いたことないし?」

「いないよ…いてもリクには教えないし…」

「え~なんで~?」

両腕をぶらぶらと揺らしながら唇を尖らせる。
弟の彼女なら、将来的に義妹になるのだし、教えてくれたっていいのに。
弟と義妹を可愛がりたいこの兄心を分かってくれないなんて…。
カイはそういうところつれない奴だ。

「…じゃあ、リクに彼女ができたら教える…」

食器を片づけながらカイが呟いた。

「え、それ俺も彼女作らないと永遠に教えてくれないってこと~!?」

「さぁね…」

小さく笑いながら店の奥へと進む弟を慌てて追いかけた。