不思議なこと…?
床に座り込んだままの私が数回まばたきをする。

『さあ、そろそろ立ち上がってお席についてちょうだいな。“私”が冷めてしまうわ』

小さな手が、席へ座るよう促すように動く。
少しずつ落ち着きを取り戻して、私は再び席についた。

「あなたは…その、オムライスの妖精…なの?」

おずおずと聞いてみる。

『あなたが納得できるなら、私はそれでかまわないわ』

その言葉を受けてゴクリとツバを飲み込む。
まさか人生を終える日に、こんな非現実的な出来事が起こるなんて。
こ…これ、どうすればいいんだろう。
色々と質問とか…してみようかな…?
そんなことを考えていると、何も食べていなかったお腹がなった。

「あっ…」

『素敵ね、空腹のお腹に“私”が入れるなんて嬉しいわ、光栄よ』

オムライスの妖精らしい女の子は嬉しそうに笑う。
私はスプーンを持ち、再びオムライスと向き合った。
そしてゆっくりと、柔らかなオムレツ部分にスプーンを入れる。
そのまま下のケチャップライスまで潜ったスプーンの上に、一口分のオムライスをのせて口へ運んだ。
女の子の優しい声が耳に届く。


『どうぞ、残さず食べてね』