声のした方を見れば、そこにはブラウンのシックなドレスに身を包んだ小さな女の子。

「あなたがチョコレートケーキの妖精様ですか!?」

興奮のあまり思わず身を乗り出して聞くと、妖精様は小さく笑みを浮かべた。
ココア色の手袋をした手が、ブラウンに色づいた口元に添えられている。

『妖精“様”だなんて、なんだかくすぐったいわ』

「いえいえ、そう呼ばせて下さい妖精様!あなたにどうしてもお聞きしたい悩みがあるのです!」

『そうね、その前にまずはもう少しだけ、離れてお話しましょう。お顔が近くてドキドキしてしまうから』

その言葉に急いで背筋を伸ばし、距離をとる。
話にのめり込む悪いクセが出てしまった。

「おっと、これは失礼…!新聞部の名残でつい…」

『いいのよ、そしてよろしければ乾燥しないうちに私を食べてほしいわ、美味しいわよ』

女の子がチョコレートケーキの乗った皿のふちに指先をかける。
それもそうだと私は備え付けのフォークを一つ取り出し、ケーキをすくいとった。

『ふふ…どうぞ、残さず食べてね』