懐かしさを感じる店の中。
私は靴を脱ぎ、座席の上で正座をしている。
右手にはペンを、左手にはメモ帳を装備して準備は万端だ。

「お待たせいた__わっ!?」

私のそんな佇まいを見るなり、腰をのけぞらせる店員さん。
どこかぎこちない様子で運んだ皿を、目の前にあるテーブルへとのせた。

「ご…ごゆっくりどうぞ~」

そそくさと店の奥へ移動する背中を見送り、視線を皿へと戻した。
その上にはまごうことなきチョコレートケーキ。
それはもちろん、私が頼んだ品だった。

「コホン…チョコレートケーキさん、私の声、聞こえておりますでしょうか」

この店の食べ物には“魔法”がかかっていると風のウワサで聞いている。

「私、金田と申します!本日はあなたにお聞きしたいことがあり来店致しました」

私が続けて自己紹介をしていると、ようやく返事が返ってきた。

『あら、元気な子がいらしたのね』