「ありがとうございました…」

去って行くその人は、機嫌が良さそうに鼻歌を歌いながら店を後にした。
お客様が嬉しそうだと、店員であるこちらも嬉しい気持ちになる。
残された皿の上は今日も完食されていて、良い日だな思った。

「カイ~、お皿を洗うからこっちに持ってきて~」

店の奥にある厨房から、双子の兄がひょっこり顔を覗かせた。

「うん…ちょっと待ってて、リク…」

右手で皿を持ち、左手に持った布巾でテーブルを拭く。
明日は誰がこの店を訪れるのだろう。
誰が来ても、その人の心が温かくなればいいな。

「カイ~、は~や~く~!」

「…今いく」

後ろから急かす声にため息を吐いて、奥へと戻っていった。