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「お待たせいたしました、ご注文のオムライスで~す」
しばらくして運ばれてきた料理が、私の目の前のテーブルへと静かに置かれる。
白い皿にのっているオムライスはまさに今、出来たてであると証明するように熱々の湯気を放っていた。
店員へと頭を下げてから、スプーンを手に取る。
「…デミグラスのオムライスじゃないの、変な感じするな…」
目の前のオムライスは、ケチャップライスの上に分厚いオムレツ、その上にケチャップのかけられた…昔ながらの見た目をしていた。
勝手にデミグラスのオムライスだと考えていた私が悪いのは理解している。
でも、メニューには料理名の記載しかなく、写真のたぐいは載ってなかったため、どこか残念な感想を抱いてしまう。
『あら、ケチャップのかかった私はお嫌いかしら?』
「…えっ?」
ふと、近くで女の子の声がして辺りを見回す。
だけど、誰もいない。
『私はここよ、テーブルの上にいるわ』
再びの声に言われるがまま、私の視線が下へと移動する。
そこには、小人のように小さな女の子がいた。
ケチャップみたいに赤い帽子をかぶって、白と黄色が混ざった卵みたいなドレスを着た女の子。
オムライスがのった皿のふちに腰かけて、その小さな子は私を見上げていた。
「___っ!!?」
ガタンと音をたてながら席から転げ落ちる。
だいぶ大きな音が鳴ったはずだけど、店の奥から店員達は出てこなかった。
私の頭の中はパニックだ。
なにこれ、なんなの。
これ、この子どういう仕掛け……?
驚く私を見つめて、女の子が楽しそうに笑う。
『まあ、新鮮な反応ですこと!さてはあなた、この町に来てまだ日が浅いのね?』
「なっ…で、わかっ…」
なんで分かったの。
そう言いたいけれど、驚きすぎて上手く話せない。
それでも私の伝えたい言葉が分かったのか、女の子はにこりと笑った。
『この町ではね、不思議なことがよく起こるのよ』



