『だって、拓人お兄ちゃんがお姉ちゃんの気持ちを裏切るなんて…私、思えないの』

___何か勘違いだったんじゃないかな?
ソーダちゃんがそう言ってこてんと首を傾げた。

「そう…かなぁ…?」

どこかモヤモヤとした気持ちのままクリームソーダを一口飲む。
ひんやりとした甘みが口内に広がった。

『ねぇ、お姉ちゃん。初めてこのお店に来たときのこと、覚えているかしら?』

「ん…もちろん、覚えてるよ」

あの頃はまだ付き合ってもいない、友達関係の拓人と二人で遊びに行くことになって、このお店を見つけて…。
思えばそのときに私が頼んだのもクリームソーダだった。

「あのとき初めてソーダちゃんに会ったんだよね」

“魔法”がかかっているなんて思わなかったから、拓人と二人、物凄くはしゃいでしまった記憶がある。
それから何度かこのお店に来るようになって…。

「そういえば…拓人に告白されたのもこのお店だったなぁ…」

『あのときの拓人お兄ちゃん、真っ赤なお顔で頑張っていたわね』

「ふふ、確かに!」

拓人ってば、私に“好き”の一言を口にするまで何時間もかかっていたっけ。
時間がかかりすぎて私の緊張はすっかり解けていたけれど。
挙げ句の果てに店員さん達も奥から顔を出して拓人を応援してくれていたのは、うん、良い思い出だったかもしれない。

『変わってしまう人はいるって分かっているけれど、私、心は変わらないところがあると信じてるの』