お出かけの日が来た。
雛子と二人、最近話題のカフェの一角に座り料理を注文する。
私は意を決してナポリタンを頼んだ。

「おお、ナポリタン美味しいよねー」

「だ、よね…美味しいよね」

雛子が笑っている間も、私は胸のドキドキをおさえられずにいる。
料理が運ばれてきて、私の目の前にナポリタンが置かれた。

「わぁ、美味しそう!いただきます!」

雛子が選んだのは分厚いふわふわしたパンケーキで、ホイップクリームがふんだんにのせられている。
雛子がパンケーキを切り分ける隙に私はナポリタンを一口食べ、紙ナプキンへと手を伸ばそうとした。

「あ、火音、口にケチャップついてるよ」

指摘され、私の胸の鼓動が一際大きく飛び跳ねる。
私は苦笑を浮かべた。
やっぱり見られてしまったか…。
でも、それならもう、仕方ないよね。

「じ、実は私ね…恥ずかしいんだけどさ…ナポリタン食べるのスゴく下手なんだ…」

私がそう言うと、雛子はいつものようにニコリと無邪気な笑みを浮かべながら口を開いた。

「あー、分かる!私もパンケーキ食べるとホイップが口の周りについちゃうもん」

___でも食べたいからしょうがないよねぇ。
そう言いながらパンケーキを頬張る雛子の口元には、ホイップクリームがついていた。

「…私が食べるの下手で、ガッカリしてない?」

「え、なんでそうなるの~?むしろ火音の意外な弱点が知れて嬉しいよ」

ニヤニヤと笑う雛子に胸をなで下ろす。
…なんだ、雛子も私と同じだったんだ。

「でもそんなに気にしてるなら…今度、上手に食べられるように食べ方の研究してみようよ!ナポリタンとパンケーキの!どう?」

「…うん、それいいね!」

雛子のそんな提案に、私はようやく心からの笑顔で頷いた。