「…ありがとうございました」
「またのご来店、お待ちしてま~す!」

二人揃って頭を下げて、お客さんを見送る。
俺はふと気になったことを双子の兄へと呟いた。

「さっきのお客さん…口元にケチャップがついたままだったんだけど…」

「え、嘘!カイってば教えてあげなきゃ~!お客様~お待ちを~!!」

そう言うなり、リクがテーブル上の紙ナプキンを手に、走って店から出て行った。
俺は、あのお客さんが指摘されると恥ずかしいかなと思って言えなかったけど、リクは違うんだな。
そんなことを言えば「そのまま放置される方が恥ずかしい思いするでしょ~!」と言われそうだ。
俺とは真逆の発想。
でも、それだからこそ、俺達はこうやって互いを補い合うことができているんだろう。

「はぁ~よかった、間に合ったよ~」

数分して戻ってきた兄弟はひたいに汗を滲ませていて、暑そうに手のひらで自身をあおいでいた。

「リクのそういうとこ…いいと思う」

「…へ?何々、どういうこと??」

きょとんとするリクに小さく笑って、店の片づけを始めた。