言いながら、頭に雛子の顔が浮かんだ。
中学時代の友達が誰一人いない高校で、初めて声をかけて友達になってくれた雛子。
___火音はいつも完璧だよね、スゴい!
___火音はアタシの自慢だよ、友達になれてよかった!
そう言われてから彼女の前では些細な失敗や、苦手な部分を見せないように頑張ってきた。
だって、そんなところを見せてしまったら、失望されるかもしれないから。
「…せっかくできた友達に、子供みたいなところを見せてガッカリさせたくないの」
そう言い終えて、女の子へ視線を向けた。
しかし、彼女は私に目もくれず、自身の派手な髪の毛をくるくると指先でいじっている。
『本当の自分も見せられないのに“友達”ねぇ…』
何気ない一言がチクリと私の心臓を刺した。
なにも言えない。言い返せない。
だってその通りだから。
私が黙っていると、痺れを切らしたかのように女の子が口を開いた。
『あのさ、アンタ…火音だっけ?ずっとそのまま“完璧人間”でこの先一生、生きてくつもり?』
きょとんとする私に女の子は皿から降りて、てくてくと近づいてくる。
そして目の前にやってくるなり、仁王立ちしながらこう続けた。
『そんなの無理。どこかで必ずボロっていうのは出るもんなの』
「そ、そんなの、分かってるよ…でも…」
人前で完璧でいようとする…人間ってそういう生き物でしょ?
続けようとした言葉は、なぜか喉から出てきてはくれなかった。
『“でも”じゃない。人には向き不向きがあって当然なの。んで、苦手を補い合うために、人はお互いを知っていかなきゃいけない』
「そんなことして、雛子に距離を置かれたら…」
『その雛子って子は、その程度でアンタと友達をやめるような薄情な子ってわけ?』
「それは絶対にありえない___!」
私はそこでハッとした。
そうだ、雛子はそんなことで私を遠ざけるような子じゃない。
女の子がにぃっと笑う。



