『ねえ、ちょっと。人の話、聞いてるの?』
その低い声色から、彼女のイライラが伝わった。
「あ…うん、聞こえてるよ!ごめんね」
私が謝ると女の子はふんと鼻をならしてそっぽを向いた。
ずいぶんと強気な妖精だな…。
少し苦手なタイプだけど、とりあえず誤解を解かなくちゃだよね。
私はフォークを皿の上に置き、女の子に向き合った。
「あのね?私、人前でナポリタンを頼むのが恥ずかしいわけじゃないの!むしろ大好物だし、メニューにあったらまず頼みたいくらい好き」
『…ふーん?じゃあ、なんで“客がいなくてよかった”だの、“こんなところ見せられない”なんて言ったのよ』
「それは…」
私の視線がテーブルの端に置かれた使用済みの紙ナプキンに移動する。
そこには口元を拭いたケチャップのあとが付着していた。
そう、私が恥ずかしいのはナポリタンを“頼む”ことじゃない。
ナポリタンを“食べている最中に”口元にケチャップがついてしまうことが恥ずかしいのだ。
紙ナプキンを指先で指し示すと、女の子は呆れたように長いため息を吐いた。
『はぁ…なに、そんなことが気になるの?』
「“そんなこと”じゃないよ。少なくとも私にとっては…」
『どういう意味?』
女の子が首を傾ける。
どうやら彼女の興味を引いたらしい。
女の子は皿のふちに腰かけて、私の次の言葉を待っていた。
私は一瞬だけ迷いながらも、ぽつぽつとその理由を話す。
「…高校で仲良くなった子が、言ったの。私は…火音はなんでもできて、完璧でスゴいって。それと…」
___友達になれてよかったって。
『そう。…で、なにそれ、自慢?』
目を細める女の子に慌てて「違う違う!」と首を振る。
「いや、つまりその…それってさ、私が“なんでもできる完璧な子”だから友達になったってことでしょ…?」



