他人に本当の自分を見せられないから、いつも私は演じてる。
苦手なことを隠すように、それだけを一生懸命に。
「あの、ここって今、開いてますか?」
おずおずと店内へ足を踏み入れるなり、カランコロンとドアについたベルが鳴る。
「は~い、やってますよ~!いらっしゃいませ~」
「…いらっしゃいませ」
深く頭を下げる双子の店員に、つられて私も頭を下げた。
良かった、喫茶店ならきっと私の求めていたアレがあるはず。
「お好きな席へどうぞ~」
ニコニコと愛想の良い店員に促され、私は窓際の席へ腰かける。
持ってきてもらったメニューの中に、お目当ての品を見つけて胸が躍るのを感じた。
すぐさま店員へと声をかけ、それを注文する。
「は~い、しばらくお待ちくださいね~」
奥へ消えていく店員の背を見送りながら、私は手探りで鞄からスマホを取り出す。
最近はやっているSNSのメッセージ欄には、友人からの新着のメッセージが届いていた。
“火音との明日のお出かけ楽しみー♡”
高校に入ってから仲良くなった雛子。
彼女のそんな無邪気な言葉に私は口元を緩ませた。
「私もだよ、と…送信」
送信完了の文字を確認してスマホをしまう。
テーブルの上にひじをついて、頬に手をあてた。
窓の外では人々が忙しそうに行き交っている。
頼んだものが運ばれるまで、そんな風景を見ながら過ごした。



