「離して、くれる……?」
お願いをしても、類は
「ヤダ、」
と言って手を離さない。
もう、勇気を出して振り向いた。
そこには涙をいっぱいにためた、でもこぼさないと頑張っている類がいた。
もう一踏ん張り。
「じゃあ、また抱きしめて『大好き』って言ってくれる………?」
返事が怖くて思わず目をギュッと瞑った。
類はそんな私の頬に優しく触れてから、
ギュッってもう離さないとでも言うかのように強く抱きしめた。
息ができないくらいに。
身動きがとれないくらいに。
類の柔らかいふわふわの髪の毛が私の頬に当たってくすぐったい。
「大好き大好き大好き。…………………、……っ――愛してる。」
あのゴールデンレトリバーの類はどこに行ったのだろう。
しっぽはきっとシュンってして、悲しそうに項垂れている。
でも、そんな類も大好きだ。

