ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



マリーはおいて行かれるのが辛かった。ダニエルと一緒にいたかったのだ。ダニエルが肩を痛めているのは分かっているので我儘は言えない。だが馬を降りてからも腰に抱きついて離れなかった。ダニエルは目線まで跪いて言った。

「マリーいい子だ。自分の部屋にいてくれ。それが私にとって安心なんだ」
「はい」と言い渋々離れた。

ダニエルはマリーの頭を撫ぜて微笑み、馬に跨り宮殿へ向かって走らせた。その後ろ姿を寂しげに目で追っていた。本当に子供の気持ちになった。ママから離れたくない。パパの傍にいたいと甘える子供のようにダニエルが恋しかった。
唯ここにいて顔を見ているだけで安心できる。ダニエルはそういう存在になりつつあったのだ。








 ダニエルが宮殿に入るとルランティノワ侯爵の取調べの報告を受けた。即座に陛下の所へ行き、今までの状況を報告した。事件の主犯格のモリスのことは、悲しい生い立ちがあっても許し難いことだと、お嘆きになられた。
 
 最後まで捜査を続けて事件が起こった詳しい報告が欲しいと言われ、被害の程とその原因を調べることになった。そしてダニエルの怪我を知り心配した。医者に診てもらい処置をするように仰せになり、ジャック・ド・スタンモイユを呼んだ。

それはエリックの父で陛下の専属の医者であった。ジャックはすぐに骨折していることが分かり、陛下に処置をするので医務室に連れて行くことを伝えた。

「骨折の処置をしますので下がらせて頂きます」
「ああ、頼んだ。私の甥だ。くれぐれも後遺症のないよう処置を願う」
「はい、お任せください」ジャックはお辞儀をした。
「陛下、ご心配なきように、私は体だけは、丈夫にできています。これぐらいの怪我はすぐに治してみせます」
「いつもながら強がりを言いおって、まだ捜査が続く無理をせずに。スタンモイユ頼んだぞ」
「はい、お任せください。では陛下、失礼いたします」

二人は医務室へ向かった。
 ジャックを見ているとエリックの父親だけあって似ていると思った。忘れていたエリックのことを思い出した。忘れていたかったのに顔までしっかり出てくるのだ。
 
父親を見ているから当たり前のことだが、いちいちエリックの存在が気になり不安になる。こんなに自分に自信がないとは思っていなかった。恋をするとこんなに不安になるものかと思い知らされる。おごり高ぶっていた以前の自分が嘘のようだとダニエルは思っていた。

 医務室に行くと骨折をしているので、骨の位置や複雑骨折をしていないか診察を受けた。幸い複雑骨折ではないので、固定機具らしきものを着けられ、白い布でも固定されて処置は終わった。
 
 その様子は痛々しく重病人に見えるので部下たちは心配した。見た目よりは元気だと伝えるも病人扱いをされる。まあ、いつもよりも優しいのから居心地いいのでダニエルは甘えてみた。あれを取れ、これを持って行けなど、どう見てもガキ大将にしか見えない。部下たちは(子供か…)と心で思いながら隊長の我儘を聞いていた。