「隊長、腕が動かないのでは、早く医者に見せましょう」
「大丈夫だ」
隊員たちがダニエルを起こして移動するときもマリーは心配でダニエルから離れなかった。横について腰に腕を回して肩を貸していた。それに気付くとマリーの肩を軽く持って助けて貰っている振りをしていた。
子供のマリーに体重を預けることはできない。でも余りにもその様子が可愛くてマリーを手離せないのだ。右肩に痛みが走っている。肩を骨折しているのをダニエルは感じていた。
マリーに心配させたくないので、強烈な痛みでも我慢していたのだ。馬に跨っても右肩をかばい。部下に手を借りて、左手でマリーを抱え一緒に馬に乗ってゆっくり移動した。
マリーはダニエルのことが気になっている。初めてダニエルのことが好きだと自覚し始めた。初恋はすぐには気付かないもので、戸惑いばかりだった。
思い返せばマリーは死ぬのかも知れないと考えた時に、ダニエルに会えない切なさに今でも心がキュッと痛むのだ。共に馬に乗っても鼓動が早くて、ダニエルに知れてしまうのが恥ずかしかった。
後にいるダニエルの顔を見るために上を見上げた。目が合って微笑む顔が眩しくて、赤くなって下を向いた。
ダニエルの右肩の痛みは時間が経つごとに増していた。マリーと目が合う度に微笑んでいた半面、冷や汗が出てくるのを感じていた。陛下への報告もあるというのに我慢の限界が来ないことを願った。
先にマリーを公爵邸に送っていた。マリーは一緒に行きたいと懇願したが、陛下の元へは連れていけない。それにモリスの取調べがある。宮殿に行けばモリスのことが、自然と耳に入るだろう。二度も誘拐された辛い状況を思い起こして、トラウマになってはいけない。
唯でさえ母親と離ればなれになり、一人で不安な日々を過ごしていたのに酷過ぎる。マリーには辛い思いをさせたくない。幸せになってもらいたい。ダニエルは心からそう思っていた。

