ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



思い浮かぶのはダニエルのことばかりで涙が滲んできた。そして勝手に涙が流れる。拭っても止めどなく出るので、前が見えなくなるのだ。

馬車は扉が開いたままで横の大木すれすれに走っていた。そして扉が大木にあたり大きな音をたてて破壊した。それから扉のないまま走っていると馬の駆ける音が聞こえてきた。

馬車が広い道に差しかかった時、扉がない出入口に向かって、マリーは顔を上げる。そこには馬に跨ったダニエルが手を差し伸べている姿が見えた。

「夢?いや、私はもう死んだかもしれない。きっとダニエル様に見える天使だ」

そう呟くと胸の前で十字をきって手を合わせた。とうとうマリーは覚悟をして神の元へ行こうと思った。天使がダニエルなら怖くないのだ。

「何している。早くこちらへ」
「神様は私が怖くないように、死に際もダニエル様の姿の天使を寄こしたのね」

納得した様子で手を伸ばそうとするとダニエルが叫んだ。

「ばか!死んではいない。私が命を懸けて守ると言っただろう」
「え、ダニエル様?本物のダニエル様ですか?」目が覚めたようにダニエルをみつめた。
「そうだ。早く手を伸ばせ」
「はい」

そう言うと慌てて手を差し出した。その途端、大きな揺れが体を後ろへ持っていくのだ。耐えきれずに後方へ倒れてしまった。

「マリー大丈夫か?」
「はい」
尻もちをついたままマリーは答えた。