近衛兵特別捜査隊の第一部長のアランがダニエルの命令どおり、女性を保護してルランティノワ侯爵に聞き取りに行った。侯爵は舞踏会には顔を出さず自室にいた。近衛兵特別捜査隊が押しかけて来たので、驚きを隠せず慌てふためいていた様子だった。
「何事か?陛下の兵士が何故、私どもの家に押し入ってきたのか?」
「近衛兵特別捜査隊は陛下の命令により、吸血鬼事件の捜査をしている。ご養子のモリス殿のことをお聞きしたい」
「モリスのこと?事件にはモリスが関わっているということですか?」
「そうです。今、地下で女性が保護されました。それに捜査隊の一員であるマリー殿を誘拐して逃亡中です」
「何ですと、誘拐。そんなことはモリスに限ってするはずがない。あの子は優秀で、とても良い子なのですよ。私が愛してやまないモリスに限って」
ルランティノワ侯爵の異常なまでに執着心があることをアランは感じた。ルランティノワ侯爵とモリスの間に何かあると感が働いたのだ。そこで宮殿まで同行することにした。
「任意の同行ですが、モリスの潔白を信じているのなら同行して頂きたい」
「モリスのために同行してやろう。誘拐なんてするはずがない。モリスも私を愛してくれている。そんな子だ。潔白に決まっている。お前たち、潔白が証明出来たら容赦しないからな」
「ご協力ありがとうございます」
こんなにモリスのことを信じているとは、アランは違和感を覚えた。まるで恋人を守るような振る舞いをしている。それは信じがたいことだった。それにしても地下での女性の傷口は生血を取っていたのだろう。そんなモリスの異常さには、ルランティノワ侯爵の影響もあるだろうと考えた。
そして仮面舞踏会は途中で終了となり、招待客は残念そうに侯爵邸を後にした。
主であるルランティノワ侯爵は出かけるために着替えた。それは堂々とした様子で任意の同行に答えると取調べのための宮殿に向かうのだ。残されたのは召使いたちだけで、静まり返った侯爵邸の片づけを黙々としていたが、不安を拭いきれず暗い表情だった。

