念願のマリーを手に入れて満悦のモリスだった。誰にも知られないように購入した郊外の城に行くことで、隠し通せると思い込んでいた。暫く身を潜めていれば、ほとぼりが冷めるだろうと安易な考えでいたのだ。それが身を亡ぼすとは知らないまま、馬車は兵士たちの間を潜り抜けて、瞬く間に遠くなっていった。
ダニエルはというとマリーを人質にされて身動きできず、モリスの言われた通りにナタリーと後ろを向いていた。気配が消えたのを感じて、すぐに振り向く。やはりモリスとマリーは消えていた。
ダニエルは追いかけるため、二人がいた所に急いで行くが、またしても何処を見ても逃げ道が分からない。必死に探し回っているのをナタリーが見て焦って言った。
「ダニエル様、どうしましょう。マリーは大丈夫ですよね」
「大丈夫です。私が必ず助ける」
「私も一緒に行っていいですか?」
「駄目です。貴方まで何かあったらマリーに顔向けができません。だから外に兵士が警備しています。貴方を保護しますので、そこまで行きましょう。マリーのために」
「分かりました。必ずマリーを助けて下さいね」
「命を懸けて助けだします」
ナタリーともと来た地下から近衛隊がいる所へ向かった。外に逃げるかもしれないと門の外に近衛兵特別捜査隊と地元の兵士を配置している。そこへナタリーを連れてきて、保護したのだ。それからマリーがここへ来ていないか確認した。警備の兵士がいった。
「怪しい者はいなかったのですが、ただ一台の馬車に侯爵夫人が血を吐いたらしく。医者に見せると急いで帰られました」
「何!血を吐いただと。その者は二人連れか?何と言う名だ」
「はい。二人連れで若い男でした。もう一人は布をかけられて女性か男性かは分からなかったのですが、胸元に血が付いて、白いレースが見えたので女性かと・・・。侯爵の名は聞いていませんが、黒い馬車にはダニエル様と同じ紋章が付いていたので、侯爵に間違いないと思い行かせました」
「何だと、黒い馬車だと。犯人の物かも知れないだろう。それにマリーの胸元に血が滲んでいた。顔を確かめなかったのか」
「はい、夫人が死ぬかもしれないと切羽詰まった様子で、人命を優先しました」
「何を騙されているんだ。それこそがモリスとマリーに違いない」
「申し訳ありません!」
「もういい。馬を借りるぞ」
「はい!」
ダニエルは捜査隊に命令を出した。それはモリスと地下にいた女性の保護。そしてルランティノワ侯爵にモリスのことを聞き取りするように命じだ。そして半数の近衛兵だけを連れてモリスとマリーを追いかけたのだ。

