ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



モリスは急いで引き出しから布を取り出し、マリーのドレスにかけ体を隠すように覆った。それから自身は、仮面をして顔を隠した。そしてマリーを胸に抱き寄せて、腕を回し細く長い指で顔を隠した。

 出口には検問をしている兵士が両側にいた。一人の兵士が手を上げ右端に馬車を寄せる合図をした。誘導されると馬車を端に寄せ馭者の黒装束の男は言った。

「何ですか?何かあったんですか?」
「怪しい者がいないか警備をしている。中を確認させてください」
「旦那さまが奥様と乗っています。侯爵夫人の持病が悪化して、急いで帰らないと命が危ない」
「時間を取らせませんので、中を確認させてください」

馭者に言ったあと、馬車の扉に向かって、中に声をかけた。

「警備のため、確認して、よろしいですか?開けますよ」
「急いでいる。開けてもいいが、早くしてくれ」
「失礼します」

兵士が開けると仮面を着けた男と抱き寄せられていて顔の見えない者がいた。不審に思い中に立ち入り顔を確認しようとした。

「何か?」
「奥様が体調の悪いと聞きました。失礼ですが、顔を確認させてもらってもいいですか?」

すると上半身にかけていた布の隙間から、血のついたドレスが見えた。

「血が・・・」
「そうだ。血を吐いた。命にかかわるんだ。早く行かせてくれ。医者に見せないと死んでしまう。妻が死んだら私は生きていけない」

迫真の演技で、まくしたてるようにモリスは言った。若い兵士は、その言葉を鵜呑みにして慌てて外に出た。奥方らしき者はピクリともしない。まるで死んだように動かないのだ。兵士は慌てた様子で馬車を通すように合図した。

「急いで下さい。止めて失礼しました」
敬礼をして扉を閉めた。

「バカな奴だ」

静かな声で吐き捨てるように独り言をいった。そして薄笑いをして仮面を外し、マリーの寝顔を見て抱きしめた。

「もう離さない。私のものだからな」