モリスは二人を後ろに向かせた後、マリーを肩に抱えて、奥にあるもう一つの隠し扉から出て行った。そこは外に出る近道だ。長い廊下を歩いて外に向っている。
マリーの体重は軽いが、長く歩くと細身のモリスの肩には重圧が感じられた。だがおいて行くには惜しい。そう思うと何とか乗り切り、黒い馬車を待機させている所まで辿り着いた。
何が起こるか分からないので、隠れ部屋の外の出口に馬車を用意していたのだ。そこには一人の黒装束の男が馭者台に乗って待っていた。
「旦那、お待ちしていました」
馭者台から降りて、モリスの抱えていたマリーを受け取り、馬車の中に座らせた。
「ご苦労だったな。このまま郊外の城に行ってくれ」
「はい、旦那」
モリスは馬車に乗り込んだ。黒装束の男が馬車の扉を閉めて、馭者台に上がり出発させた。すると出口の外の所で、近衛兵が警備をしているのが見えた。黒装束の男が門の手前で支持を仰ぐため馬車を停めて、馭者台からモリスに話しかけた。
「旦那、門の外に兵士らしき者がいます。どうしますか?」
「何!」
窓を開け覗いてみた。すると近衛兵が数十人待機していた。モリスは一瞬、驚いた様子だったが、冷静さを取り戻し、落ち着いた声で言った。
「侯爵夫人の持病が悪化して急いで帰ると伝えろ。大袈裟に言え、死ぬかもしれないとな」
「はい」

