ルランティノワ侯爵は、モリスが可愛くて仕方がなかった。妻を亡くした時のこの世の終わりかと思わせるような日々から脱出した。暗かった侯爵邸は、一気に明るい陽射しが射したように温かい場所に変わった。
だがモリスにとって、安らいだ場所であったのは束の間だった。ルランティノワ侯爵は日に日にモリスが、より妻に似てくるのを見て我慢できなくなった。
男色の気はなかったが、妻の顔を見ているのだから欲望は限界がきていた。ある夜のことモリスの部屋に侯爵が忍び込んだ。モリスは十一才になっていたが、何が起こったか分からず、嫌われたくないという一心で、されるがまま侯爵を受け入れた。
心は悲鳴を上げていた。でも拒否すれば、また孤児院に逆戻りだ。あの辛い日々に二度と戻りたくないのだ。こんなことをするが、侯爵は優しくしてくれる。美味しい物も食べられるし贅沢もできる。ただ我慢すればいいのだと自分に言い聞かせた。
侯爵はモリスを妻のように大事にした。妻が生き返ったと思うくらいの喜びを感じていた。だが毎夜訪れる侯爵は、モリスに後ろめたいと思う気持ちがあった。
その見返りにモリスがしたいということは何でも叶えてやっていた。モリスはそれを利用して医学の勉強をしたいと侯爵にねだって学校に通わせてもらった。そして学生の中でも十位以内に入る優秀な成績だった。二十歳になった今も学生として学校に通っていた。
そんな知識を利用して美しくなりたいという歪んだ欲望に走っていた。そのため犠牲者が出ているのだ。生血は美の源だとモリスは考えた。生血を飲むと肌の艶もいいのだ。美しくいられる。
そう思うのは、この地位を維持するためだ。美しくあれば侯爵に捨てられず愛されるのだと浅はかな考えを巡らせていた。
そしてこのままでいくとマリーも無理やり結婚させられるという犠牲者になるのだ。
モリスは美しいマリーを抱きしめていた。

