モリスはマリーの上半身を起こして口元にグラスを持っていった。そのグラスを見てマリーは首を横に振った。
「駄目だよ。飲まないと」
「これは何?血?」マリーはやっと声が出た。
「そうだよ。生血だ。これを飲むと美しくなれるんだ」
「この血は檻の中の女性の物なの?」
「そうさ。あの女たちは、私に捧げられるべきして、連れられてこられた」
「嘘よ。誘拐したんでしょ。私も攫われかけた」
「君だったのか。私好みの美しい女性を見つけたと聞いた」
「ママはどこ?ママを連れ去って行ったでしょ」
「ああ、君の母親か。大丈夫だ。この城にいるよ。大事に預かっている。」
「ママをかえして」
「君、次第だ。あらぬことを考えると母親はどうなるのだろうね」
「止めて。ママには手出ししないで」
「君がいい子にして、私の言うことを聞くなら手出しはしないよ」
「分かったわ」
「じゃ、まずこれを飲むのだ」
「これだけは飲めない」
「何だ。要らないのか。駄目だ。君のための物だ」
そう言うと口に血を含みマリーの顎を左手で自分の方に向け口移しで飲ませる。マリーは口の中の血を吐き叫んで気切した。
「何だよ。勿体ないな。苦労して用意したものなのに、だがいいさ、いつか慣れる。私の妻には、いつまでも美しくあって欲しいからね」
モリスは美しい物を好むのだ。マリーと夜会で出会ってから狙っていた。この美しさは自分だけのものだと思ったのだった。いつか結婚しないといけないのなら美しい者を選ぶ。美しいことは美徳だと思っている。そう思えるのは、今の地位になれたからだ。

