ダニエルの焦りようは、ただごとではなかった。夜会に潜んで参加している部下達に合図をして、集合させマリーがいなくなったことを伝え一斉に捜索させた。
一方マリーは会場の外のバルコニーにモリスといた。踊った後に喉が渇いただろうとモリスは、グラスに入った飲み物を手渡してくれた。美味しいと思って一気に飲んでしまうと頭が朦朧としてきた。
「マリーさん大丈夫ですか?」
「このグラスに何が入っていたのですか?」
「ただの飲み物ですよ。もしかして酔ったんじゃないですか?良かったら休んで下さい」
マリーは立っていられなくなりモリスに寄りかかっていた。すると腰を抱き寄せられて足元がふらつきモリスにすがった。
モリスは意識がもうろうとしたマリーを隠すように上着をかけた。そして速足に会場を横切り、地下へと続く廊下を進んでいた。地下に行くとマリーを肩に抱きかかえた。マリーは意識がもうろうとしながらも袖の中に隠していたクッキーを出し、等間隔に落として居場所を辿れるようにした。そして途中で意識を失った。
気が付くと石作りの壁がある部屋にいるのだった。ベッドに寝かせられていて起き上がる力が出ない。辺りを寝たまま見回すと何もない部屋に大きな鳥籠みたいな檻があった。その中に若い女性が、腕に血の滲んだ包帯を巻かれてぐったりとしていた。その女性も意識がもうろうとした状態だった。
檻の横には石で作られたベッドがある。そのベッドに寝転んだとしたら腕にくる辺りに溝がある。溝は少し伸びていて、一番下の到達点に穴があけられていた。その下の台に受けるように乗せられたグラスに赤い物が入っていた。これは血だと分かった。
考えただけでも気持ちが悪くなり吐き気がしてきた。モリスが現れて、そのグラスを手に持ちマリーの方へ歩いて来た。マリーは薬が効いているのか口がきけない。
「お目覚めかな、愛しい人。さあ君の分の血だ。これでより美しくなれるよ」

