ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



「駄目です。化粧が崩れます」

ダニエルは手を外し押さえつけて無理やりキスをしようとした。

「嫌です。そんなことしたら嫌いになりますよ」

ダニエルは寸止めで唇を合わせなかった。こんな場面は体験したことが無かった。好きさゆえに我慢したのだった。嫌われたら最悪だからこそ欲望を押さえられた。その真っ直ぐな目は純粋過ぎて手を出せないのが本音だった。

 女性に拒絶された経験がないため、落ち込んでしまうのだ。嫌な空気が漂っているのは間違いない。それなのにダニエルは子供みたいに怒って素っ気なくなった。マリーの横から離れた。

「ダニエル様、怒らないで下さい。後でいっぱい抱きしめてあげますね」

母のようにさとすマリーを見て笑った。

「分かった。約束だ」

マリーは微笑み頷いた。先程まで緊張していたが、子供のようなダニエルを見て緊張が解けた。それに拗ねているダニエルが可愛くて仕方が無い。

恐怖心があったがダニエルがいてくれることで、怖さが何処かに行ってしまようだ。何だか上手くいく気がしてきた。用意は万端だ。もし朝までかかるのなら子供服をドレスの裾に括り付けて隠している。

子供の姿なら手出しはしないだろう。何が起こるか分からないが、頼もしいダニエルがいるのだから平気だと思っていた。

 馬車はどんどん進み古びた城に到着した。二人は馬車を降りて見上げると大きな城が聳え立っていった。古びてはいるが、燦爛としていた。その一角だけが人のざわめく声と明るい音楽で賑やかだ。

仮面を付けた紳士や淑女が大勢いた。だがその仮面が異様にも思えるのは気のせいだろうかとダニエルは思った。マリーを馬車から降ろすと視線を感じる。マリーの美しさは仮面では隠せないのだ。

その視線は絡みつくように付き纏うのだ。どこにいても感じるのは気のせいではないと思った。ダニエルの警戒心は更に強くなった。