ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



 ドレスを手にしてマリーは微笑んでいた。それを見てダニエルは言った。

「さあ、マリー。夜会当日のドレスは、この中でどれにしたい?着ていく物を選ぶといい」
「はい」

ダニエルに向けての可愛い笑顔は、心にドキっときていた。無意識にマリーを抱き締めてしまっているのだ。気を緩めると何故かこの状態になる。マリーを抱きしめて充電しているかのようだ。癒され元気になる存在だからこそ、この状態だ。

「あのダニエル様、どうしたのですか?」

そして腕の中で上目使いに見てくる無垢な目に相当やられてしまったらしい。

「頼む、もう少しこのままでいさせてくれ」

抱き締められていたマリーは温かい腕の中で胸の高まりと安らぎを感じた。昼間のお菓子作りとたまに捜査の手伝いで、夜は自分磨きに大忙しの毎日はめまぐるしく時が過ぎた。

そしてマリーは日に日に美しく磨きを上げられていた。美しくなればなるほど、ダニエルの不安と心配が募っていくのだった。

夜会当日は夜に大人の姿に戻るのを待った。そしてマリーは化粧をしてドレスを着ると美しく変わっていくのだった。

夜会は仮面舞踏会で仮面はドレスとお揃いの水色にピンク色のフリルが付いた物を手に持っていた。美しく着飾ったのに顔を隠すのが勿体ほどだった。

誰もがその仮面を剥いで美しさを見たくなる存在だ。馬車の中で向いに座るマリーにダニエルは、またしても美しさの余り溜息をつていた。

「マリー、その美しさを独り占めしたいほどだ。その仮面は今すぐ着けて、ずっと外さないで欲しいものだ」
「ダニエル様ここぞと思った所で外します。そうしないと私だとは分からないでしょ。おとり捜査になりませんよ」
「分かってはいるのだが、やはり危険過ぎる」
「またですか。ダニエル様、何度言えば分かるのですか。危険を避けていたら解決する事件も解決しませんよ」
「ただ嫌な予感がしてならない」
「そんな時はダニエル様が助けてくださいね。信じています」
「当たり前だ。私にしかマリーは助けられない」
「はい、お願いしますね」

そう言うと馬車の中で仮面をつけた。ダニエルはがっかりして言った。

「マリー、もう仮面をつけるのか?その美しさをもう少し私に見せてはくれないのか?」
「もうここから捜査は始まっています。おとり捜査を成功させるために演じ切ります」
「私の前では、そう力を入れて演じなくても」
「いいえ、ダニエル様をも私の虜に出来るくらいに演じなくては」

ダニエルはマリーの横に行き腰に手を回した。

「もうとっくに虜になっている」

マリーにキスをしようとして顔を近づけた。するとダニエルの口を手で押さえて止めた。