マリーは今でも夜会の準備をしている。魅力的に見えるための努力をする。専門家を呼びドレス選びから化粧そして所作までも更に学んでいる。
これ以上どう優美になろうというのか考えただけで、ダニエルは心配になる。でも頼まれて専門家を呼んでいるのは、ダニエルだったので何も言えない。
それでも気になるのでレッスンの場にいるのだ。今日は化粧を教えてもらっているマリーを目の前にしている。今回は意見を聞きたいと歓迎してくれた。
「意見とは何を聞きたい? どうして私がマリーの化粧しているところを見ているのかな?」
「ダニエル様も男の方なので好みを知りたいのです。男性が好む女性の化粧」
「え、私の好みか?それなら化粧をしなくてもマリーは綺麗だから素顔でいい」
「えっと、そうですか・・・。そうじゃあなくて・・・。先生、一般的に好まれるのは?」
マリーはダニエルの意見に困って専門の先生に聞いてみた。
「ダニエル様は化粧が薄い方がいいのです。一般的に男性は派手だと下品に見えて敬遠してしまう方が、多いというデーターがあります」
「はい、分かりました。薄化粧がお勧めですね。先生、この色の口紅は発色が、よく上品に見えますか?」
「そうですね。薄いピンクで誰もが好む優しい色ですね」
「じゃ、これにします」
「塗り方はべったと塗らすに自然に」
「はい」
マリーを見てダニエルは感心した。勉強熱心なことは良いことだ。そのせいで綺麗になり過ぎて奪われるのも癪だった。
一番気掛かりなのは、日にちが僅かしかないので、焦って詰め込み過ぎて倒れないかと心配になった。
「張り切っているね。そんなに頑張り過ぎると後で疲れが出てしまう」
「大丈夫です。頑張るのは当たり前です。仕事ですから」
「仕事ねえ」
「何ですか?その意味ありげな言葉」
「私を目の前に置いて化粧するとは、男として見てないのかと思ってね」
「男性の目から見てどうかと意見を聞くために来て頂いています。信用しているからこそ、必要なんです」
「信用とは嬉しいが、男の目から見てか・・・」
鏡を覗くマリーの後ろで、座りテーブルに片肘を立てていた。鏡の中のマリーは美しく、ため息が出る程だ。美しいものを見ると誰もが幸せな気分になる。
それだけでなくマリーには色々な意味を含むのだ。それは誰もが息を呑む美しさと男性限定の魅了する美しさだ。
同じ美しさでも男性を夢中にさせてほしくはない。(ライバルが増えて仕方がない)とダニエルはまた心配になってきた。
唯でさえエリックという、ややこしい人物がいるのだから、ライバルが多数となると頭を抱えることが増えるだろう。

