ダニエルはマリーを傷つけられたら耐えられない。止めるように説得をしてもマリーは聞かなかった。
マリーは、おとりになるしか方法がないと考えていた。何一つ手掛かりを残さないのだから証拠が掴めない。証拠を作るために身を挺してとしか考えられないのだ。
死者が出ているのだから恐ろしいだろう。恐怖心があるのならば、やめて欲しいと投げかけても震えながらこう言った。
「私がやらないと誰がやるのですか。犠牲者が増えるばかりです。大丈夫、殺すのが惜しいくらいの甘い罠を掛けてみせます」
「色仕掛けか。その罠、私に試してくれないか?」
「何言ってるんですか」
マリーは恐ろしさと緊張が解けたように笑った。マリーの芯の強さに感心した。自分を犠牲にしてまでも助けたいと考えるとは人として素晴らしい。
自分勝手で人のせいにする者が多い世の中、自分の力で人のためになろうとするのだからダニエルは、マリーと出会えて感謝した。
心の美しさは幸せを呼ぶ、一緒にいるだけで心が洗われる。憎しみや嫉み悲しみを洗い流してくれるだろう。マリーを必ず守ると決意した。
近衛兵特別捜査隊は、貴族の集団であるからモリスの開催する夜会に潜入するのは、難なくできる。
参加する貴婦人たちを調べ、夜会に同伴させてもらうのだ。決して捜査のことは秘密にしなくてはいけない。
その中には、近衛兵に好意があると誤解されてしまい追っかけに変わる場合があるが、良家の独身男子が多いので、アイドル的存在になる。本人達も満更でもない。
そのお陰で良縁が舞い込む場合があるからだ。さらに意中の娘が振り向いてくれるとなると恋も実るのだ。

