ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



馬車の中ではダニエルが膝にマリーを乗せて抱きしめていた。マリーは幼い頃、泣くと父親に抱きしめられたことを思い出した。その胸と同じようにダニエルは頼もしく優しかった。

安心感と恋しさで、このまま時間が止まればいいのにという思いがあった。父親のようにと思いながら胸の奥のときめきを感じていた。それがまだ恋とは分からないのだ。

もうそろそろ気付いていい頃なのに経験がないとは、恐ろしく鈍感なものだった。でもマリーは、ただ幸せな気持ちでいるのは間違いないのだ。

馬車に揺られて、間もなく公爵邸に着いた。執事がダニエルに夜会の招待状が来ていることを伝えた。それがマリーにというので、ダニエルはその招待状をマリーに渡しておくと言って受け取った。

そして子供の姿のマリーと一緒にダニエルの部屋で招待状を開封することにした。

 ソファにマリーと座り招待状が誰から来ているのか開封した。予想通りモリスからだった。
 
 一度同じ物を貰ったはずが、捨てられては困ると二度も送ってきたのだろう。二枚も届いていた必ず招待したいと考えたのだ。変わっているというか、何かしら不気味さを感じた。

「やはりモリスからだな。これはマリーに相当執着している証拠だ。狙っていることは間違いない」
「じゃ、ママの手掛かりが見つかるってこと」
「そうだが、危険だ」
「でも危険に飛び込んでこそ、解決ができるのではないですか」
「それはそうだが」
「私は夜会に行き事件の真相にたどり着きます」
「でも、どうやって暴くのかが問題だ」
「それは私が、罠をかける」
「どうやって」
「もし犯人だとしたら若い女性が好みですよね。私が着飾って美しくあれば欲しくなる」
「止めてくれ、欲しいなんて言わないでくれ。胸騒ぎがする」
「そんなことでは、ママを助けられないし、事件が解決しない。女であることを利用して仕掛ける甘い罠です」
「私はとっくに甘い罠にかかっているが、他の男まで罠にかける気なのか」
「何言っているんですか?事件の犯人をおびき寄せるためです。可笑しなことを言わないで下さい」
「ああ、心配で仕方がない」

ダニエルは、もし自分が犯人としたらマリーをどうするか、考えただけで行かせたくなかった。大人の想像、いや男としてあらぬ考えが頭を過るのだった。

宙を見て目を覆い、両の蟀谷を親指と中指で押さえた。パニックって考えが纏まらないのだった。ダニエルはフリーズしていた。

「ダニエル様、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない」

座ったままマリーを抱きしめた。マリーはダニエルが、何を考えているか分からず頭を傾げていた。