ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



  馬車がエリックの家の前に着くと先にダニエルが降りて、マリーを抱きかかえるようにして降ろした。マリーは扉をノックしてエリックが出てくるのを待った。すると警戒した声が、閉まったままの扉の奥からした。

「どちら様?」
「私よ。マリー」

すると中から早く開けようとガタガタと鍵を動かして、勢いよく扉を開けた。

「マリー!えっ・・・」

ダニエルを見て心も体も引いていた。その隙間にマリーは小さな体を押し入れた。マリーだけ入った後に隙を見て扉を閉める動作をしたが、ダニエルはまたしても扉に足を入れて阻止した。

それでもエリックは、部屋に入れまいと格闘してくる。靴を押しのけようと足を踏んでくる。それでもダニエルは、扉を肩で押して入ろうとした。それを見たマリーは、エリックに怒った口調で言った。

「何しているの?エリック。ダニエル様を家に入れなさい」
「嫌だ」
「私のために来ているのよ。入れないとエリックの所には、もう来ないわよ」
「えー。何でそうなるの?仕方がないな」

渋々ダニエルを入れた。ダニエルは服の乱れを直してエリックに言った。

「子供か」
「何だとー」
「止めなさい」とマリーの大きな声がした。

エリックが振り向くとマリーは怒った様子で、腕組みをして睨みつけた。するとエリックは、勢いづいていた態度をどこかに置いて来たように一瞬にして気落ちした。

「マリー怒るなよ」
「ダニエル様は、私のために一緒に来てくださったって言ったでしょ」
「マリーの為って、どういうことだよ」
「元に戻る薬が出来たか気にかけていて、この姿が戻らないことを心配してくれているの」
「それは俺も一緒で、早くもとのままにと思っているんだ。けど若返りの薬でも難しいのに、それを元に戻すなんて難題に決まっているだろう」
「じゃ、無理なの?ずっとこのままなの?」マリーは泣き出した。
「いや、頑張る。頑張っているから絶対に作るから泣かないでくれよ」

エリックはマリーを抱きかかえて体を揺らしあやした。

「止めて!子供じゃない」
「分かっている。でもそんな姿で泣かれたら、こうなるだろ」
「もう、いいから降ろして」

 マリーを抱きしめて、離そうとしないエリックに、ダニエルは腹を立てていた。それも異常な程に怒りが込み上げてくる。自分の感情がコントロールできないと思っていたら体が勝手に動いた。エリックに抱きしめられていたマリーを奪い取る。そしてゆっくりと床に降ろした。

その後、二人は睨み合い目を離さない。まるで縄張り争いする犬猫のように一歩も譲らない。目を離せば負けだと思っているように見えた。
 
空気が悪いのにマリーは気付いて二人の足元から割って入った。背の高い二人は、まるで大きな塔が聳え立つみたいで、割って入ったものの、自分の存在に気付かないかと思えた。
 
 だが二人には足元にいたマリーの存在が大きかったようだ。一斉にしゃがみ込み言い訳のように話しだした。

「マリー、そんなつもりは無かった。可愛さの余り抱きしめた」
「私はエリックに腹が立ち。睨み合いをしてしまった」
「もう、いいわ。エリック、薬はどうなっているの?」