朝食の席に着いたダニエルは、リンゴのコンポートとクリームを添えた皿を見て、デザートを作ったマリーを思った。ここにいなくてもマリーの存在を感じることができると、幸せな気持ちになる。昼は仕事で帰れないから昼用の菓子を持って行こうと思っていた。
馬車の所にはマリーが子供の姿で軍服を着て立っていた。決まりが悪そうで目を合わそうとしない。敢えて抱きかかえマリーの視線を向けた。怒った顔をしたマリーは言う。
「止めて、子供扱いしないで」
馭者はそれを聞いてクスっと笑った。マリーは子供の姿なのを思い出して、ダニエルの首元に両腕を回して顔を肩に埋めて隠れた。ダニエルは笑顔を見せて、抱きかかえたまま馬車に乗り込んだ。
馬車に乗り込むと向い合せに座り昨日の夜の話をした。
「昨日の愛の告白は積極的だったな」
「待ってください。私には記憶がないんですが」
「残念だ。覚えてないのか?私にベッドから離れないように、抱きついて寝ていたのに」
「え、私に何もしていないですよね」
「いや、私が迫られたかな」
「それは記憶にないことなので、無かったことに」
「私を弄ぶ気か?」
「からかうのは、止めてください」
膨れっ面をして睨んだ。ダニエルはその可愛さに声を出して笑った。それを見て更に機嫌を損ねてそっぽを向いた。そんな、たわいのない話をしているだけで、ダニエルは癒されていた。

