ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



   ダニエルの仕事は早く、夜会の招待状をすぐに手に入れた。マリーの事件から一週間後にようやく動き出した。夜会が小規模なので、いつもより人員を減らし有望な隊員を選抜した。

外に大多数待機させ中には、4名を召使いとしてシャンパンなどの飲み物を運ぶ。その4名は主催者の協力の下で会場に位置した。

 ダニエルとマリーは目立ちたくはなかったので、遅れて会場に入ることにした。小規模な夜会なので二人が参加すると鮮やかに華やいだ。そのせいで返って目立ってしまったのだった。

何処にいてもマリーは分かる。ダニエルはあえて遠くにいて、見張っていた。すると何人かの男がダンスに誘う。マリーは卒なく対応した。どの人物も区別なく平等に接したのだ。

それは好意的で当たりがいいため、十人以上の男性がダンスを誘って来たのだ。その度に人物の正体を確認した。三名がダニエルの親戚筋と判明した。その中に気になる一人がいた。それが女性の様に美しく線の細い男だった。最初は男装をしているのかと見間違える程だった。

ダニエルの感が働いた。その人物は怪しく不気味だ。マリーと踊っている時も蛇の如くからみついている。狙った獲物は離さないと思わせるぐらいだ。二人の会話を知りたいが、聞こえない。隣にいた令嬢に手を借りようと思いダンスに誘った。

「えっ、私?私でいいんですか?」
「貴女でなくてはダメなんです」
「ええ、喜んで」

誤解を招く誘い方だが、隣にいるので捜査のために踊って下さいとは言えない。令嬢は終始、ダニエルに熱い視線を向けていた。それも目に入らず、マリーの傍に自然と行くことだけを考えてダンスのエスコートをした。

令嬢はダンスの上手さに酔いしれていた。マリーたちの至近距離まで令嬢は抱かれるように寄り添い踊っていた。やっとマリーの近くに寄って背中越しに会話を聞いた。

「君の名前は?」
「マリーです。マリー・ブロサッムです」
「ブロサッム。花のように美しい人だ」
「そんなこと言われたのは始めてです。でも私より貴方の方が美しいですよ」
「そう言われるのが一番嬉しい」
マリーにキスをしょうとした。その後ろからぶつかってくる男女がいた。
「失礼」

マリーはその声の方を見るとダニエルが、知らない令嬢と抱き合って踊っていた。思わず二度見をするくらい、びっくりした顔をした。

マリーは心に薔薇の棘が刺さったみたいに痛いと感じた。そして嫌な思いがいらつきに変わる。それは嫉妬心なのにマリーにとっては得体の知れない物に思えた。それ以上に怒りを感じているのは踊っていた男だった。

「何だ。貴様は?」
「踊りは得意ではないので、教えて頂けますか?」と言うとダニエルは、その男の手を取り踊り出した。

美しい二人だったので会場の人々が、うっとりしたのだ。まるでこの舞踏会の主役だった。優雅な踊りに見えたが、男はダニエルから逃れようともがいていた。

 その冷たい表情の内は、怒りの炎が揺らめいていた。どうもがいていてもダニエルの鍛えられた体にはびくともしない。力ずくのダンスだったのに美し過ぎるのだ。
またしてもダニエルが男好きだと噂が広がる。