ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



 もしやダニエルに心を惹かれているのかとエリックは思った。これは大変だと心の中では大騒ぎしていたが、表面は冷静なふりをした。そこでマリーからダニエルを遠ざけることを考えた。。

「大丈夫だ。ダニエルと関わらなければ治まる」
「どういうこと?」
「きっと疲れているんだ。ダニエルと捜査をしていると色々あって、大変だからな」

エリックは誤魔化したが、気が気でないことは確かだ。先にマリーを好きになったのに、長い間、育んできた恋心が、最近、知り合ったばかりの奴に取られるのは納得がいかない。

奴から離したい。焦る気持ちが先走り頭の中に有らぬことまでよぎって、要らない心配事が増える。そう考えるとマリーは渡さないと、強い思いが沸き上がった。

「そうだね。本当に大変なことばかりだものね」
「そうそう、そうだよ。だから息抜きに、ここへ来ればいいよ」
「うん。ありがとう」

 持つべきものは幼馴染みの友達だと、マリーは実感した。ここ数週間、大きく変動した人生に飲み込まれて、辛く悲しい思いが押し寄せてきた。
 
この思いを和らげてくれるエリックに感謝した。心が折れずに立っていられるのは、一人ではなく支えてもらえる人がいるからだと考えた。だから今は優しさに甘えようと思った。そんなエリックの下心は知らないままでいるマリーだった。

「ねえ、マリーお茶入れるよ。きっと落ち着くよ」
「ありがとう。エリックは優しいね」

 笑顔で答えるエリックは、マリーを引き止めるのに必死でいる。1秒でも長くマリーと一緒にいたいのだ。ポットやカップを二人で用意するだけでも幸せでいられるからだ。