ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



 エリックの家に行くと安心感がある。幼い頃から一緒だったからなのだろうと考えていた。だがそれは束の間だった。マリーの顔を見ると帰って来たと喜ぶエリックが、知りたいことが多すぎて質問攻めに言葉が嵐のように襲ってくる。

「マリー、事件の進展はあったか?犯人の手掛かりはどうだ?叔母さんはみつかりそうか?ダニエルとは仲良くしてないだろうな」
「ち、ちょっと待って、そんなに質問されても…ゆっくり話して落ち着いてね」

深呼吸してエリックは唐突に質問した。
「ダニエルとの仲は?もしや良い感じになってないだろうな?」

マリーは良い感じという言葉にカチンときた。ダニエルのせいで体に不調をきたしているのに、エリックはそれに追い打ちをする。それがどうしても腹立たしいのだ。いつもながらエリックには厳しい物言いをした。

「何言っているの?ダニエル様は私のことなど何も思ってないわよ。私だって・・・」
「本当だな。それなら良かった」

エリックは安堵の表情だった。それもマリーは癪に障った。どうしてなのか分からないが、ブラックな心が覗かせていた。兄妹ぐらい近いせいか、エリックには容赦ない。

「体調悪くてエリックに癒してもらおうと思って来たのに、もういい」

マリーは家から出て行こうとした。するとエリックが子供のマリーを抱きかかえた。足をバタバタさせて抵抗したが、椅子に座らされた。

「体調悪いのか?」
「うん」

座ったまま、前に跪いて心配そうにマリーの顔を覗き込んだ。その表情の真剣さにエリックに怒りをぶつけたことを反省した。こんなにも心配してくれるのはエリックだけかもしれないと思っていた。

「ごめんなさい。ついエリックに当たってしまってる」
「いいよ」

するとエリックも熱があるか額に手をあてた。でもダニエルの時のように、動悸がしない。
どうしてだろうか、マリーは考えたが分からない。でも今もダニエルのことを考えてエリックと比べている。今は何も症状が出ていないと。エリックは心配していたが、熱が無いと分かり安心した。

「熱はないようだな」
「でも、さっきは動悸が激しく、熱も体の中に篭ったようで、顔も赤くなる」
「何だ。俺もマリーといると、そんな感じがしている」

エリックは嫌な予感がした。