ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



  今日は捜査会議に出席する。今まで集めた情報を共有するためだ。会議室に王は出席していないが、難しい顔の部下たちが揃っていた。会議が始まるものの、一向に進展が見られないのだ。

そこでダニエルの提案を話し合うことになった。それは夜会で招待客になり、情報を集める侵入捜査だ。マリーの証言の黒い馬車の紋章は貴族の物で、多くの貴族が集まる夜会こそが、犯人の手掛かりが見つかるはずだと。

「隊長、夜会では女性の同伴がいるのですか?」
「大丈夫だ。私には協力者がいる。それはマリオットの姉のマリーだ」
「マリーとは?」
「だから私専属のパティシエールだ」
「えっ!一般庶民なんですか?大丈夫なのですか?」
「何の問題もない。今、夜会に向けての準備をしている。マリオット、状況を話してくれ」
「はい、隊長。姉は午前中にみっちりとダンスに一般教養を身につけ、昼食はテーブルマナーを厳しく特訓しています」
「隊長。噂ではマリオットが受けているとも聞きましたが」
「何だと、それは何処からの情報だ」
「それは、あの、噂で」
「噂に惑わされるな」

ダニエルは怒り出した。噂なんかに左右されるのが腹立たしかった。ましてや自分の部下たちが、根も葉もないことを信じるとは嘆かわしく思ったのだ。

マリオットがレッスンを受けているのは間違いないが、マリオットが受けているというと混乱する。それは仕方がない。誤魔化さなくてはいけないと思っていた。それにしても部下たちは知りたかった。食い下がって聞き出そうと、今度はマリーに矛先を変えた。

「マリオット、それは噂だけか?」