ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



 次の日からマリーは、夜会に行くために、ダニエルの特訓が始まった。午前中はダンスで、昼食はマナーのレッスン。午後は捜査で外回りに行く。子供のマリーを連れ回すので、男好きのうえ、子供にまで手を出したのかと貴婦人の中では、大きな噂になっている。

ダニエルは、いつものことだと気にもしない。マリーはそのとばっちりを受けたようで、部屋に入ろうとする扉の前でアマンダに待ち伏せをされ、一挙に質問されるのだった。

「マリオ。どうなっているの?噂が凄いわよ」
「噂って?」
「朝からダニエル様の部屋に呼ばれているし、昼食も部屋で一緒なんでしょう」
「うん。色々と教えてもらっている」
「何、色々と教えてもらっているの?怪しい」
「怪しくないよ。マナー全般」
「何のマナー?」
「ダンスと食事、一般教養」
「マリオにそれ、必要なの」
「知って、損はないでしょ」
「そうかな?分かんないけど、相当な大きな噂になっているよ」
「まさか。何にもないのに」
「貴族や庶民までもが噂をしている。ダニエル様の男好きは、子供にまで手を出したとか」
「そんな訳ないよ」

マリーは笑い飛ばして部屋に入った。アマンダは扉を叩いて「まだ聞きたいことあるのよ」と言うが、マリーは「それ以上、話す事柄はない」と出かける準備をした。

 扉を開けると、もうアマンダはいない。諦めて何処かへ行ったのだろうと気にしなかった。ダニエルは捜査の時はいつも連れて行ってくれている。今日もそれを感謝をしている。
 
それに陛下に頼んでくれたので、捜査隊の軍服も子供用を用意してくれた。ダニエルとお揃いが嬉しい。だがダニエルの勲章の数は誰よりも多く、捜査隊長の役目を果たしていると感じた。それから他の部下達と同じ軍服は、捜査を許されている証拠だ。それは母親を探すための近道になっているような気がした。