ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



マリーがダニエルに奪われるかもしれないとエリックは不安になっていた。マリーが近くにいれば、そんな心配はない。だが公爵邸にいて、ましてやダニエルが傍にいるのだから拭いきれない煩悶(はんもん)が襲ってきた。

そこへ子供のマリーが家の扉を叩いた。エリックは、またダニエルが来たかと思い不機嫌な顔を覗かせた。するとマリーだと気付き顔が一瞬のうちに明るくなる。

「不機嫌そうなところ、ごめんね」
部屋に入ってマリーは自分の荷物のある場所に歩いて行った。その後ろからエリックがついて追いかけて来る。

「うわぁ、マリーだ。会いたかった。俺の思いが届いたんだな。神に感謝だ」
「何、大袈裟なこと言っているの」
「本当にマリーだよな。幻じゃないよな」

そう言ってマリーを自分の方に向けて抱きついた。マリーは離そうとするが力が強い。子供だから、その腕から逃れるのは無理だと思ったので怒りだした。エリックの胸を両手の拳で交互に叩いた。可愛いマリーに叩かれて喜んでいる。更にマリーは声を荒げて言った。

「早くしないと大人になっちゃう。服が張り裂けちゃう」
「あ、そうか、もうすぐ日が暮れるな」

やっと気付き腕をゆるめた。一緒に服を探しだした。探し当てた大人の服に慌てて着替えようとしていた。

「早く着替えないと」

そう言うと視線を感じて振り向くと、ヘラヘラ笑っているエリックが見ていた。マリーは腕を組み怒った顔をしていた。それも可愛くて仕方がないとエリックは幸せそうな、間の抜けた顔をして更にヘラヘラと笑った。

「着替えるの。出て行って」
「あ、ごめん」
と言った途端、目の前でマリーは大人へと変わっていく。

ブラウスは胸の辺りで裂けて、ボタンがはずれたので、マリーは胸を押さえて隠した。ズボンも裂けてお尻の辺りから破れていたので座り込んだ。それを目の当たりにしたエリックは目が離せないでいた。

「何見てるの。出て行って!」

 大きな声で我に返り、顔を真っ赤にして寝室の扉の外に急いで駆け出た。エリックはマリーの大人の肉体が、あれだけ成長していたことに、まだ心臓が駆けているように鳴り響いて止めることができなかった。扉に押し当てた背中に部屋にいるマリーの存在を感じていた。マリーへの気持ちは相当、重症らしい。