ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



  扉を叩くとエリックが顔を覗かせた。するとダニエルを見るなり扉を閉めようとした。隙を与えず、少し開いた扉に靴を入れて力ずくで、無理やり家にあがり込んだ。

歓迎されていないのは、エリックの嫌そうな表情で一目瞭然だった。それも面白いとダニエルは楽しんでいた。

「事件の捜査で来た。ここはお前の家か?」
「見て分かるだろ。何で勝手にあがり込む、入っていいとは言ってないぞ」
「捜査で疲れた。少し休ませろ」
「何を偉そうに、捜査の協力はするが、お前の部下ではないぞ」
「捜査の一員だ。部下も同然だ」
「マリーが捜査に協力しろと言うから、してやっているだけだ。マリーがいなかったら協力しない」
「マリオットだろう」
「あっ、やばい、間違えた。マリオットだった。紛らわしい」

ダニエルは中央にある食卓の椅子に座った。
「お前、マリオットが好きなのか?」
エリックは勢いよく向かいの椅子に座った。しかも開き直っていたのだ。

「そうだ。好きだ。好きで何が悪い。純粋な気持ちで誠意は示している」
「マリオットか?何か気になるよな。お前も私も何か、おかしいよな」
「何でおかしいいんだ。あんなに可愛くて、性格もいいし綺麗だし料理は旨いし、何処をどう取っても完璧だ」
「えっ、マリオットだろう?」
「そうさ。マリオットだ。だから好きでどこが悪い」
「マリオットも料理が上手いのか。やっぱり姉弟だものな」
「俺はマリーと結婚する。そしてマリオットと兄弟になるんだ。これで、つじつまが合うだろう」
「お前もマリーが好きなのか」
「お前、待って、どういうことだ?俺のマリーを、お前は、いつから好きなんだ?」
「それは、あの店の常連になった時からかな」
「勝手に好きになるな。いつでもマリーはモテ過ぎて、相手は手強い奴ばかりだ。どれだけ、てこずって諦めさせたか知らないだろう。だからな、絶対に負けないからな」
「だが、同じくらいマリオットも気になるんだ」
「さすが、マリーのことが好きなだけある。同一だと、無意識に見破っている」エリックは心の声を無意識に小声でつぶやいていた。

「何、ぶつぶつ言っている。訳が分からない奴だな」
「分からなくって結構だ。もう帰れ!」
「捜査中だ。聞き込みに来ている。この辺りで誘拐事件の情報を収集している。何か聞いたことはないか?」

 エリックはマリーが誘拐されかけたことを思い出した。あの時、黒装束の男達が、マリーを追いかけて来たことや、マリーの店に踏み込んで来て怯えていたこともあった。
 
マリーが子供の姿でなかったら、連れ去られていただろう。自分の研究が初めて役立ったのに、マリーに怒られて嫌われるんじゃないかとアタフタしたのを思いおこした。