ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



やっと令嬢に会えたと思っていたら、何と舞踏会に行くかのような装いで現れたので驚いた。
一瞬、話が入ってこなかったが、集中して情報を聞いてみると何件かの重なるものと同じことを言った。これは信憑性があると感じて詳しく聞いてみることにした。令嬢は向いあい座っていた身を乗り出して言った。

「ダニエル様、自らお越し頂いたので、是非、捜査協力したいと思っておりますの」
「先程の話の中で誘拐されそうになった時は、どのような状況でしたか?」
「それは恐ろしいことでありました。お化粧品を買おうと馬車を置いて、少し離れた店に向かう途中に黒装束の男二人が、いきなりり出て来て、わたくしを抱きかかえて連れ去ろうとしました。それを見てメイドが下僕を呼んできて助けられました」
「その男達の顔を見ましたか?」
「あまりの怖さで逃れることに、必死で顔は覚えていませんわ」
「そうですか。では男達が逃走した時の手掛かりは何かありませんか?」
「下僕が後を追いかけたところ、黒い馬車で逃げたそうです」
「どんな特徴の黒い馬車でしたか?」
「詳しいことは、下僕を呼びますので聞いて下さい」
「お願いします」

伯爵令嬢はメイドに下僕を呼んでこさせた。下僕はしどろもどろで答えたが、のらりくらりと同じ話を繰り返す。それは令嬢の言ったこと以外は別段、変わった情報ではなかった。

そして切りのいい所で帰ろうと思うが、なかなか帰してくれない。ダニエルは気付かないが、令嬢の目的は違う所にあるのだから、この状況を逃れるには難しいのだった。それでも仕事がまだ残っていると理由づけ伯爵邸を後にした。

情報は錯乱していたが、ダニエルが行くと確かに収穫があった。そこで情報提供した娘たちの周辺も聞き込みをすることにした。1件ずつ回っていくと、偶然にエリックの家にたどり着いた。マリーの幼馴染みと言うことで興味があった。