ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



捜査が始まって10日が経ったが、何の手掛かりもない。1つ分かったことは女性の遺体が隣町の者で、行方不明になって3日程で発見されたことだった。ダニエルは振り出しに戻し、1から捜査をすることにした。

行方不明者の家族に聞き取りをしても本人でないので手掛かりがないのは当たり前だ。そこで若い女性をターゲットにしているのだから、もう1度、町中の娘たちに手あたり次第、聞いて回った。

部下たちを聞いて回らせるだけでなく、今回はダニエルも足を運んだ。娘たちはダニエルが捜査で回っていると聞くや否や早速、情報提供をすると大勢が申し出た。

着飾った娘たちはダニエルに会いたいがために部下が、回って来ても答えず「ダニエル様なら話す」と言うのだった。道理で進展しないはずだった。独身のダニエルだからアイドル並みにもてているのだ。あわよくば夫人の座を狙っている貴族の令嬢たちもいた。

中でも何軒か同じもので有力な情報があった。その1軒にある貴族の伯爵令嬢の話だった。伯爵邸はダニエルを待ち構えていた。話を聞くだけなので玄関先の入口で聞こうとしたら客間に通された。

待てど暮らせど、なかなか現れない。椅子に座らされて、近くにあるワゴンには紅茶と菓子が置かれていた。まるで昼のお茶会のように優雅な様子が漂っていた。これは見合いでもしているような錯覚をした。使用人のメイドが来て言った。

「少し時間がかかりますので、お茶を入れさせて頂きます」
「仕事で来ているので、お構いなく」

そう言っても聞こえていないかのような雰囲気だった。澄ましてワゴンの紅茶を入れてテーブルに菓子と紅茶の入ったカップを置いた。

「どうぞ、お召し上がりください」
「ありがとう」

仕方がないと思い置かれた紅茶を1口飲み菓子を食べた。やはりマリーが作った菓子とは比べ物にならないぐらい味気ない。何が違うのだろうと考えたが、比べる方が失礼だと思い紅茶で菓子を胃に流し入れた。

マリーの菓子を紹介したいが、よく考えると店を閉めている。ある意味マリーの菓子を独占しているのだから、優越感に浸ってもいいと思えた。独占していると考えただけで嬉しくて無意識に笑っていた。誰かに見られていたら不気味なダニエルだろう。