ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー

 
 
 
 会議の内容は街の娘たちが誘拐されたことだ。捜索願の多さは、王の想像を超えていたらしい。それが十代後半から二十代前半までの未婚の娘たちばかりだ。あまりにも人数が多いので王は特別捜査隊に頼るしかなかった。ダニエル達なら解決できるだろうと集結された。

今までの捜査内容をその会議で公表した。特に各地域での誘拐された娘の人数と特徴などを詳しく情報共有した。会議は約二時間で終わった。

 帰りの馬車の中、ダニエルは考えごとをして無言だった。何度かマリーは事件のことを質問してみたが、捜査中のため発言を控えるという。
 
マリーは聞き出せないのでがっかりしていた。母親の事件だといいのだが、それはきっと違うものだろうと勝手に推測した。少しの間、二人は無言のまま馬車に揺られていた。宮殿から離れて町中に来ると急に馬車が止まった。やけに外が騒がしい。すると馭者が、大声でダニエルに呼びかけた。

「ダニエル様、人盛りで進めません。どうしましょう?」
「何かあったのか」
「ちょっとお待ちください。聞いてきます」

馭者は馬車から降りて辺りの人に聞いた。暫くすると戻ってきて報告した。

「ダニエル様、若い娘のが意識不明で倒れていて、大騒ぎになっています」
「えっ、何だって。若い女性か」

ダニエルは馭者に捜索隊を呼びに行かせた。そして馬車から降りて、人々が道に群がり大騒ぎをしている方向へ向かった。マリーも続いて降りてダニエルの後を追って走っていった。

 人盛りの中心で、女が道端に倒れていた。その横に男が片膝を立て跪き、首の動脈を指で押さえて生死を確認していた。若い男のようだ。何か怪しげな男の後ろ姿にダニエルは叫んだ。

「貴様、何者だ」

男は驚いた様子で、振り向いた。マリーは後ろから追いついた。そして男の顔を見て、誰だか気づき大声で名前を呼んだ。

「エリック!」
「えっ、知り合いか?」
「知り合いも何も、幼馴染みです」
「大人と子供の幼馴染み?」
「あっ、えーっと、お姉ちゃんの幼馴染みです」

エリックがマリーに近づき、両脇を持って、高く抱きかかえた。可愛いとばかりマリーを強く抱きしめていた。

「マリー」
「降ろして」嫌がって足をばたつかせた。

渋々、降ろすとマリーはエリックに近づき小声で言う。

「マリーじゃない。マリオット」
「マリオット・・・?」
「久しぶりエリック」作り笑いはぎこちない。