ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー



暫くすると、宮殿に到着した。門をくぐっても、まだ奥に向かって馬車が走っていた。窓から外を見ると、広大な敷地に入って行くと緑の木々を抜けて、庭園脇を通り入口まで走っていた。

 入口に着くと扉の前に数人の兵士が両脇に立っていた。ここまで来ては引き戻せないのでマリーを馬車において行くことにした。ダニエルはマリーに向かっていった。

「おとなしく待っていろ」
「僕も連れて行って」
「だめだ。今日は王に呼ばれている。事件が起こったに違いない。これは遊びではない。待っているんだ」真剣なダニエルの眼差しにマリーは渋々答えた。
「分かった。待っているよ」
「いい子だ」

馬車を出て階段を上がりダニエルは、宮殿の扉に向かった。両脇の兵士全員が敬礼をした。ダニエルは頷いて入って行った。その姿をマリーは馬車の窓越しに見ていた。今までに見たことがないダニエルの姿は、凛々しく頼もしかった。それは軍人の顔になっていたのだ。

 馬車は移動された。入口の前から馬車が留置できる場所へと向かった。そこも広い敷地で他にも数台の馬車が止められていた。マリーは馬車の中で待っていたが、退屈で仕方ない。待てど暮らせど、ダニエルは帰ってこないと大袈裟に思っていた。そこでダニエルが何故、宮殿に呼ばれたのか、気になっていたので馭者に聞いてみることにした。

 馬車を降りると、そこに馭者がいた。馬車の点検をしているようで、車体を覗き込んだり馬の様子を見たりと動き回っていた。

「あの」
「えっ、誰だ」
「ダニエル様と馬車に乗って来た」
「乗っているところを見てないぞ」
「かくれんぼうしていたら、ダニエル様に見つかってここまで来た」
「そう言えば、馬を見ていた子供はお前か?」
「そう」
「いつも厳しいダニエル様が、お前にはやけに優しいな」
「まあ、子供だからね」
「子供に目くじら立てても大人気がないか」
「そうそう。それにしても宮殿にダニエル様は、どうして呼ばれたの?」
「ダニエル様は特別捜査隊の隊長で、謎の事件が起きた時に呼ばれる」
「そうなんだ。謎の事件。どんな事件なの」
「それは俺達には分からない。秘密裏に捜査するからな」
「秘密か、どんな事件か、知りたいな」
「ダニエル様は安易に教えてくれないよ」
「そうだよね」

どんな事件か知りたかったが、教えてもらえないし、考えても検討がつかない。母親が連れ去られたことが、マリーにとっての大事件なのだ。他に事件など考えられない。ただ思うのは犯人を捕まえて、母親を帰して欲しい。それ以上は望まないということだ。

 一方、ダニエルは王と数人の部下達と会議の席にいた。部屋の中は1番奥に王が離れて椅子に座り空間をあけ、その前列にダニエルが座る。部下たちは階級によって前方から後方に向かって座っていた。若い部下は最後方に立っていた。二十四人程だがダニエルを始め若い世代が結集された活気に満ちた会議だ。