ルームNo.4を聴いた私の情緒



ほんの、ほんの、出来心だった。赤い部屋の4番目の扉を開けたのだ。もう引き返せるかもわからない藍紫へと引き摺り込まれ、扉は外側から錠をかけられる。
どろりとした譜に重なる少し掠れた色香の漂う歌声に洗脳された。
これは危険だと扉の方へ振り返れば扉は跡形もなく消え失せて、私は逃げられぬ事を察した。
進む他ない、この藍紫の部屋の奥まで。

歌声は私にまとわり染みになる。
毒のような回り方に寒気を覚えても尚、進む事をやめない私はもう思考が特異点を超えただろう。

この歌声に溺れたい
そんな思考にあざをつけられた私の足取りは軽く、部屋の奥へ奥へ進んで行く。
その間も歌声はおいでおいでと私をいざなって。
そして
部屋の最奥には簡素な扉があった。それはきっと出口に繋がる扉で、そこを開ければこの藍紫から解放される事は明白であった。
扉の前で立ちつくせば、譜も歌声もやみ、空気が澄みかける。

「嫌」

私は戻る、早足で
そして藍紫の毒香を一身に浴びた。
私が次に目を開け澄んだ空気を吸った時手の上の端末は暗黒で、赤い部屋も同時に消え失せていた。