その日は、空が朝からどんより曇っていた。
天気予報では「夜から雨」と言っていたのに、放課後、
下校の時間にはもうポツポツと降り出していた。
「やば、傘持ってきてない……」
下駄箱の前で立ち尽くす。
周りを見れば、みんなは傘を広げて、楽しそうに友達と並んで帰っていく。
私はカバンで頭をかばいながら、校門へと小走りに出た。
でも、すぐに本降りになって――。
「うわ……」
足元までびしょ濡れになる。
仕方なく立ち止まったそのときだった。
ぱさっ、と音を立てて、頭上に傘が差し出された。
「えっ……」
横を見ようとした瞬間、その人は足早に駆け出していった。
顔も見えなかった。
残されたのは、雨を防いでくれる大きめの黒い傘だけ。
私はただ、その場に立ち尽くしていた。



